細胞接着分子フィブロネクチン(FN)のインプラント材料への固定は,オッセオインテグレーションのみならず,軟組織接着による生物学的封鎖を向上させることが期待される.一方,プラズマ照射による超親水性処理は,タンパク質のチタンへの吸着を促進することが報告されている.本研究は,フィブロネクチン(FN)のジルコニア(ZrO2)への吸着特性をチタン(Ti)と比較して調査するとともに,チタン(Ti)およびジルコニア(ZrO2)への吸着特性,および超親水性処理がFNの吸着に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,併せて表面分析を行いFNの吸着機構を考察した.
水晶発振子マイクロバランス(QCM-D)用のTiおよびZrO2センサーに,大気圧プラズマ処理による超親水性処理を施し,Ti-Plasma,ZrO2-Plasmaとした.コントロールとして,大気中保存(未処理)のTi,ZrO2センサー(Ti-Air,ZrO2-Air)およびAuセンサー(Au-Air)を用いた.各表面の表面性状を調査した後,QCM-D法によりFNの吸着特性を評価した.その結果,TiとZrO2への吸着量は金への吸着量と比較し大幅に増加したが,TiとZrO2間ではほとんど差を示さなかった.この理由は,ZrO2表面とTi表面には近似した酸化物と水酸基が存在することが要因と考えられた.また,プラズマ処理によりTi,ZrO2ともFNの吸着量を促進することが明らかとなった.この理由は,プラズマ処理により表面の炭化水素が除去され水酸基が増加することにより表面エネルギーが増大したこと,さらには正に荷電している塩基性水酸基の量が増加し,負に荷電しているFNの吸着が促進された結果と考えられた.