2020 年 33 巻 3 号 p. 275-284
処置の予知性を高めるためには,診査診断を十分に行い,術前に増生の目的や目標,術式の選択について明確にすることが重要である.下顎臼歯部などの非審美領域での骨増生の目標は,インプラントを機能させるために必要な骨量を確保することである.軟組織増生の目標は,補綴装置の清掃性を向上させるために必要な軟組織のカントゥアと口腔前庭を形成することである.一方で前歯部などの審美領域においては,それらに加えて隣接する残存歯に調和する自然感や審美性が求められる.すなわち,部位や患者の要望などによって求められる治療のゴールは異なり,それぞれにおいて適切な術式を選択すべきである.本稿では非審美領域,審美領域においての硬組織軟組織増生の役割と術式の選択について,症例と文献レビューを通して解説する.