2020 年 33 巻 3 号 p. 291-297
本研究は,超音波スケーラーのスケーラー用チップの材質の違いが,純チタン2種(Cp-Ti)およびイットリア安定型正方晶ジルコニア(Y-TZP)表面に与える影響を明らかにすることを目的とした.
鏡面に仕上げたCp-Ti,Y-TZP試験片を金属製およびプラスチック製のチップにてスケーリングし,チップ応用時の各試験片に加わっている荷重を圧電式多成分小型切削動力計にて測定した.また,各試験片のスケーリング前,スケーリング後の表面を3D測定レーザー顕微鏡にて観察すると同時に粗さ特性値を測定した.
結果,プラスチック製および金属製のチップ応用時には,両方ともCp-Tiへ加わっている力が大きかった.Cp-Tiは金属製およびプラスチック製のチップともにスケーリング後の粗さ特性値が増加し,特に金属製チップを使用した表面の粗さの増加が大きかったことから,金属製チップの使用は避けるべきであると考えられた.一方,Y-TZPは金属製およびプラスチック製のチップともにスケーリング前と粗さ特性値に差が少なかった.このことより,Y-TZP表面に固着した歯石などの除去において,プラスチック製チップのみならず金属製チップの使用は問題ないことが示唆された.