2021 年 34 巻 1 号 p. 45-51
本研究は,インプラントの免荷期間中に義歯を使用することによるインプラント治療への影響を調査することを目的とした.東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来において,2002年4月から2015年3月の間に治療した下記の5つの条件をすべて満たした症例を対象とした.①ブローネマルクインプラントシステム,②連続3歯以上の欠損,③2本以上のインプラント埋入,④二回法,⑤埋入時のインプラント体粗面の露出・骨移植なし.調査内容は,年齢,性別,欠損部位(上顎または下顎),治癒期間中の義歯の装着の有無,二次手術までのインプラントの早期脱落・撤去本数,残存率と骨吸収の有無とした.
症例は177症例,インプラント埋入595本(男性295本,女性300本),平均年齢61.7±9.8歳(男性63.7±8.0歳,女性60.0±10.8歳)であった.義歯装着群ではインプラント残存率は97.5%,義歯不使用群では残存率は99.6%であり,両者の間に統計学的に有意な差が認められた.また義歯装着群における骨吸収ありは9.2%,義歯不使用群における骨吸収ありは0.4%で,両者の間に統計学的に有意な差が認められた.インプラント体周囲の骨吸収に対する義歯の装着の有無と性別および上下顎との間には統計学的有意差は認められなかった.本研究より,インプラントの治癒期間中の義歯の使用は,インプラントの残存率を低下させ,インプラント体周囲の骨吸収を増加することが確認された.