2022 年 35 巻 1 号 p. 24-28
無歯顎患者に対する固定性インプラント上部構造は,高いインプラントの残存率とともに,信頼性の高い補綴方法と報告されている.しかしながら長期にわたる機能のなかで,上部構造の破損や摩耗を生じ,上部構造の再製作が必要になることも少なくない.今回デジタル機器を十分に活用し,2回の来院で最終補綴装置を製作する方法を検証したので報告する.
患者は55歳,男性.上下無歯顎で,インプラントフルブリッジの摩耗や破折による咀嚼困難を訴え来院した.2010年に上下顎それぞれにインプラントが4本埋入され,その上部構造としてアクリルレジン製のフルブリッジを装着されていた.約10年間使用していた補綴装置は,人工歯や歯肉色レジンの摩耗や損傷が著しかった.旧補綴装置の修理後,プロビジョナルレストレーションとして使用しながら,咬合および粘膜面の形態を調整した.最終補綴装置製作にあたり,2021年3月にインプラント位置スキャン用の新規スキャンゲージ,旧補綴装置スキャン用のスキャンアナログ,および口腔内スキャナーを用いて1回の来院で口腔内と旧補綴装置のスキャンを終了し,2回目の来院でジルコニアフルブリッジを装着した.
本法は,患者来院回数を減らすだけでなく,アナログによる印象採得に伴う患者の苦痛や,術者のチェアサイドの手技を減じることができ,かつきわめて高い精度での複製が可能であることから,非常に有用な方法であることが示された.