2022 年 35 巻 4 号 p. 283-290
インプラント埋入に際して,CT画像から得られた顎骨のデジタルデータを,イントラオーラルスキャナや模型スキャナに取り込んだ歯列のデジタルデータと重ね合わせる,シミュレーションソフトが近年多用されている.さらに,シミュレーションソフト内蔵のインプラントのデジタルデータを使用しインプラントの寸法および埋入位置を計画することで,正確なインプラント埋入を可能にしている.
しかし,これらデジタルデータの原寸に対する精確性を過信すると,安全安心なインプラント治療に問題が生じる可能性がある.
本稿では,複数のCT(CBCT,MDCT)や,スキャナ,シミュレーションソフトの寸法再現性を検討した.結果,各種デジタルデータは,原寸に対して拡大や縮小することが明らかになった.また,おのおのの寸法変化率に差があるため,重ね合わせデータにも歪みが生じることが示唆された.
安心なインプラントの診断は,デジタルデータの原寸に対する精度の追求はもとより,それらをいかに調和させるかが重要である.また,デジタルデータの限界を熟知したうえで治療を行う,いわばアナログ的な治療感覚ももち合わせることが,治療上の問題点を回避するうえで重要な視点であると考える.