日本口腔インプラント学会誌
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特集 医療デジタルデータおよびインプラントシミュレーションの正しい取り扱いとデジタルワークフローの落とし穴と将来展望
インプラントシミュレーション,デジタルワークフローの現状と将来展望
梅原 一浩四ツ谷 護関根 秀志
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2022 年 35 巻 4 号 p. 291-299

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抄録

近年,インプラント治療におけるデジタル化は,ガイデッド・サージェリー,光学印象,CAD/CAMシステムを応用した補綴装置の製作がデジタルワークフローとして取り上げられている.これらの目的は,外科治療や間接法における技術的,理工学的な誤差を回避して,誰が行っても同じ結果を得ることを可能にすることである.その結果,安心・安全なインプラント治療ができるようになり,光学印象やCAD/CAMシステムの精度や方法,材料に関しても改良が進み,その良さを臨床で実感できるようになっている.

インプラント治療の目的は,欠損部の咬合支持と機能や審美を回復させ,患者のQOLを向上させることである.そのためには,インプラント埋入位置,埋入方向,埋入深度をシミュレーションするだけでなく,上部構造を製作するために,咬合高径,咬合平面,咬合彎曲,顎運動といった咬合再構成するための要素を含めた治療計画を立案することが重要である.我々は,多くの先人たちの研究報告から,おのおのが知識と経験を基に臨床を研鑽してきた.しかし,パノラマ,セファログラム,顎運動測定記録など,治療計画に関する診察・検査・診断は,これまでそれぞれ独立したアナログで行われることが多い.我々が考えるデジタル化は,こうした独立して診察・検査・診断されてきたデータを,三次元的な一つのデータにすることで,最初の診察・検査・診断に指標となる一助を加え,先人たちとの経験値を縮めることである.

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© 2022 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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