2022 年 35 巻 4 号 p. 300-307
本研究の目的は,インプラント体の埋入深度を変化させた顎模型を用い,シリコーン印象法と口腔内スキャナーを用いた光学印象法でスキャンボディの三次元的精度を比較検討することであった.
上顎左側側切歯欠損模型の22欠損部にインプラント体を歯肉縁下1.0 mm,3.0 mm,5.0 mmで埋入し,マスターモデルを3種類製作した後,スキャンボディをインプラント体に装着し,基本データの取得を行った.シリコーン印象法を用いて,マスターモデルの作業模型を製作し,スキャンボディをインプラントアナログに装着した後,データを取得した(WM-1,WM-3,WM-5,n=5).次に,3種類の口腔内スキャナー(Medit i700(M7),Trios3(T3),Primescan(PS))を用いて,マスターモデルの光学印象を行い,データを取得した(M7-1,T3-1,PS-1,M7-3,T3-3,PS-3,M7-5,T3-5,PS-5,n=5).取得したデータは三次元解析ソフトに入力し,同じインプラント体の埋入深度における基本データとWM,M7,T3,PSを重ね合わせ,適合率の算出とカラーマッピングの評価を行った.その結果,WMの適合率はインプラント体の埋入深度が深くなると低下したが,M7,T3,PSはすべての埋入深度において高い値を示した.以上より,シリコーン印象法のインプラント位置再現性はインプラント体の埋入深度が歯肉縁下5.0 mmになると大きく低下したが,各種口腔内スキャナーを用いた光学印象法はすべてのインプラント体の埋入深度において,高いインプラント位置再現性を示した.