2023 年 36 巻 2 号 p. 101-107
近年,インプラント治療の診断技術の進歩と医療安全対策の結果として,インプラント治療の安全性は向上していると考えられる.しかし,依然として医療事故や医療訴訟の報告は後を絶たない.他の歯科治療と異なり,インプラント治療に付随する患者の不満や苦情の特徴は,インプラント治療終了後,一定の期間良好に経過したメインテナンス期に発生することにある.患者は「もの言う医療消費者」と化し,治療が進むにつれて患者自身が到達目標を上げることで満足度が低下し,権利を主張する.インプラントの医事紛争の特徴や,インプラント患者の苦情の特殊性,そしてインフォームドコンセントにおける問題点について,開業医の立場から説明する.