日本口腔インプラント学会誌
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36 巻, 2 号
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特集 インプラント周囲組織の疾患の診断
  • 吉村 篤利, 菊池 毅
    原稿種別: 特集 インプラント周囲組織の疾患の診断
    2023 年 36 巻 2 号 p. 69
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー
  • 市丸 英二, 吉永 泰周, 山口 竜亮
    原稿種別: 特集 インプラント周囲組織の疾患の診断
    2023 年 36 巻 2 号 p. 70-82
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    2018年の米国歯周病学会と欧州歯周病連盟によるコンセンサスレポートにおいて発表されたインプラント周囲疾患の新分類,診断基準および活用方法について解説する.

    インプラント周囲粘膜の炎症は発赤,腫脹などの肉眼的所見,線状あるいは粒状のプロービング時出血(BOP)およびインプラント周囲ポケットからの排膿から診断する.インプラント周囲の組織破壊は,2時点のエックス線画像およびプロービング時ポケット深さ(PPD)を比較し,インプラント周囲骨における進行性の骨吸収,あるいはPPDの深部化から診断する.一方,このような経過観察データがない場合は,3 mm以上の骨吸収あるいは6 mm以上のPPDを組織破壊と診断する.そして,インプラント周囲組織に炎症も組織破壊も認めない状態を健全,粘膜に炎症を認めるが組織破壊を伴わない病態をインプラント周囲粘膜炎,両方を認める病態をインプラント周囲炎と診断する.

    インプラント周囲疾患の診査診断は,歯周疾患と対比してBOP,排膿,PPDおよび病的骨吸収に対する解釈が異なる.エックス線画像あるいはPPDの経時的変化を診断することは容易ではない.歯周疾患は口腔単位で,インプラント周囲疾患はインプラント単位で診断する.そのため,これらの特異事項をインプラント周囲疾患の専用診査用紙に記入し,口腔単位の歯周疾患とインプラント単位のインプラント周囲疾患を併記して診断および記録する必要があろう.

  • 辰巳 順一
    原稿種別: 特集 インプラント周囲組織の疾患の診断
    2023 年 36 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    咀嚼機能回復の一方法としてインプラント治療はすでに国民に定着している.しかし,一定の割合で治療後にインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎といった併発症が発症する.本疾患について2017年に新たな分類が公表され,疾患の実態が正確に把握できるようになった.新たな分類を正確に理解し,疾患の実態を把握し,これを基に発症のリスク因子や予防法,治療方法についてのエビデンスを確立することが今後求められる.高齢者がますます増加する我が国において,治療を受けた施設でメインテナンスや併発症の治療を受けられない患者への対応も想定しなければならない.今後さらにエビデンスを構築したうえで,患者へ正しい対応を行う規格作りが必要になってきているのではないか.そのために,インプラント周囲疾患の分類,リスク因子,治療法について現時点で何が明らかとなっているのかをまとめ,さらには今後解決しなければならない課題について考えた.

  • 阪本 貴司, 上杉 聡史, 飯田 格
    原稿種別: 特集 インプラント周囲組織の疾患の診断
    2023 年 36 巻 2 号 p. 89-99
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    2018年にEuropean Federation of Periodontology(EFP)とAmerican Academy of Periodontology(AAP)の合同ワークショップに基づいた,新しい歯周病の分類が発表された.新基準によるインプラント周囲炎の診断は,BOP(bleeding on probing),PPD(probing pocket depth),エックス線検査による骨吸収の検査を基準としている.インプラントの上部構造装着後の検査結果と比較し,PPDの増加,エックス線検査による骨吸収の増加,BOPによる出血または排膿を基準として診断すると明記された.過去の検査データがない場合には,BOP陽性,PPD≧6 mm,骨吸収≧3 mmを基準とするとした.BOPについては,25 g以下または同等の弱圧で行うことが注意喚起されている.エックス線検査による骨吸収の増加には,initial bone remodelingを超えた骨吸収と記載された.このリモデリングは二回法インプラントにおいて,二次手術後にアバットメント装着後などインプラント体上部が口腔内に露出した後,6か月から1年以内に生じる骨吸収である.Biologic widthまたはsupracrestal tissue attachmentに準じた正常な骨吸収像である.Implant-abutment junctionから下降する上皮付着を,インプラント体よりも径の細いアバットメント(non-matching morse taper type)を使用し,上皮の下降方向を水平方向に変えることで,垂直的な上皮下降を減少させることができる.このnon-matching morse taper typeがplatform switchingと呼ばれる.この正常なリモデリングをインプラント周囲炎による骨吸収と間違えないように,明確に区別した.骨のリモデリングに影響を及ぼす因子は,implant-abutment junctionの結合様式とインプラント体の埋入深度である.それによって決まる,インプラント体と上部構造物とのマイクロギャップの垂直的な位置が重要である.

特集 インプラント治療にかかわる医療事故や医療訴訟への対応
  • 戸田 伊紀, 小室 暁
    原稿種別: 特集 インプラント治療にかかわる医療事故や医療訴訟への対応
    2023 年 36 巻 2 号 p. 100
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー
  • 木村 正, 飯田 格, 阪本 貴司
    原稿種別: 特集 インプラント治療にかかわる医療事故や医療訴訟への対応
    2023 年 36 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    近年,インプラント治療の診断技術の進歩と医療安全対策の結果として,インプラント治療の安全性は向上していると考えられる.しかし,依然として医療事故や医療訴訟の報告は後を絶たない.他の歯科治療と異なり,インプラント治療に付随する患者の不満や苦情の特徴は,インプラント治療終了後,一定の期間良好に経過したメインテナンス期に発生することにある.患者は「もの言う医療消費者」と化し,治療が進むにつれて患者自身が到達目標を上げることで満足度が低下し,権利を主張する.インプラントの医事紛争の特徴や,インプラント患者の苦情の特殊性,そしてインフォームドコンセントにおける問題点について,開業医の立場から説明する.

  • 若松 陽子
    原稿種別: 特集 インプラント治療にかかわる医療事故や医療訴訟への対応
    2023 年 36 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    医療紛争の予防と解決を図るには,紛争の原因によって対処することになる.医療過誤があった場合は,誠実に謝罪し,その原因の究明と除去が求められる.医療過誤がなかった場合でも,偶発症の発生や患者の思い込みによっても紛争が生じる.いずれの場合も,インフォームドコンセントの徹底が役立つが,第三者による説得や法的解決が必要となることもある.歯科医療は外貌に影響を与えるため,特に自由診療においては,患者の主観的嗜好によるクレームが発生する.しかし,あくまでも歯科医療は治療であって,美容医療とは一線を画すことを,事前に理解してもらうことが大切である.一方,歯科医師側においても,患者の訴えを真摯に受け止め,放置することなく,適切な対処をすべきである.最近の判例では,リドカイン中毒を見過ごし放置したため死亡に至った事件と,下顎インプラントによる神経麻痺を放置したため後遺症が残った事件を紹介し,警鐘としたい.また,インプラント術後のメインテナンスの必要性を自覚していない歯科医師の存在が,国民生活センターのアンケート調査で判明している.技術と知見を磨くことが最大の紛争予防である.

症例報告
  • 篠田 智生, 納田 英二郎, 尾立 哲郎, 澤瀬 隆
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    インプラント治療が咀嚼機能の回復・維持に大きな効果を発揮することは示唆されているものの,口腔機能低下症の診断に用いられる各評価項目に対するインプラント治療の効果やQuality of Life(QOL)との関係について調査した報告はみられない.本稿では,口腔機能低下症に該当する5名の患者についてインプラント治療を行い,治療前後の口腔機能検査結果およびOral Health Impact Profile(OHIP)による口腔関連QOLの変化について報告する.

    第一および第二大臼歯欠損を含む欠損歯列を有する口腔機能低下症に該当する5名の患者についてインプラント治療を行い,治療前および術後6か月以内において,口腔機能検査およびOHIP-JP16スコアを取得し,それぞれ比較した.

    すべての症例で口腔機能の改善および口腔関連QOLの改善が認められた.

  • 貝淵 信之, 浪花 崇史, 赤城 裕一, 賀川 千瑛, 越智 英行, 古賀 陽子, 岡本 俊宏
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    歯科インプラント手術は周囲組織の損傷により,致死的な気道閉塞を引き起こす可能性がある.今回我々は,歯科インプラント二次手術後に口底出血をきたし,緊急気管挿管を必要とした口底血腫の1例を経験したのでその概要を報告する.

    患者は53歳,女性.2018年3月,某歯科医院で下顎左側臼歯部に歯科インプラント二次手術を施行された.二次手術の創は舌側歯肉の骨膜に減張切開を加えて閉創された.同日帰宅後,急激な顎下部の腫脹を自覚したため同院を再受診.同院で紹介元の歯科医師による止血処置中に呼吸苦を訴えたため救急要請となり,当院救急外来へ搬送された.初診時,意識レベルJCS(Japan Coma Scale)Ⅰ-1,開口不能であった.左側顎下部からオトガイ正中部にかけて腫脹を認め,左側舌下部の腫脹により舌が挙上していた.口腔内に活動性の出血は認めなかった.CTでは左側傍咽頭間隙に含気像を伴う38×27 mmの低吸収領域を認め,気道は右方偏位し狭窄していた.同日,ICUに入床し気管支ファイバースコープガイド下にて緊急気管挿管を実施した.SBT/ABPC 6 g,カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム50 mg,トラネキサム酸1 gを連日投与した.第6病日に抜管し一般病棟へ転床,第14病日に経過良好のため退院となった.

  • 君 賢司, 山森 徹雄, 高橋 昌宏, 栗城 いづみ, 池田 敏和, 松本 知生, 渥美 元康, 松尾 泰幸
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 2 号 p. 126-133
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    血清亜鉛低値により,再発性アフタ性口内炎が起こりうることが過去に報告されている.我々は,血清亜鉛低値の関与が疑われる,64歳の再発性アフタ性口内炎を発症している女性患者に対し,亜鉛補充療法を行いながら,上顎両側臼歯部欠損に対しインプラント治療を行った.まず亜鉛補充療法を行い,口内炎が形成されていない時期を狙ってインプラント埋入を行った.血清亜鉛低値を伴う再発性アフタ性口内炎患者は,亜鉛補充療法などの原因療法を行ったうえで,インプラント埋入を行うことが望ましいと考えられた.

調査・統計・資料
  • 川上 紗和子, 塩田 真, 加藤 しおり, 今北 千春, 田子内 道徹, 丸川 恵理子
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2023 年 36 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/25
    ジャーナル フリー

    東京医科歯科大学病院歯系診療部門口腔機能系診療領域口腔インプラント科(旧東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来)では,1996年度より5年ごとに新来患者の動向について報告を行ってきた.2021年度の本大学口腔インプラント科の新来患者総数,性別患者数,年齢別患者数,来院理由別患者数をまとめ,過年度との比較,分析を行った.

    新来患者総数は1996年度の275名から2011年度の1,643名をピークに増加したが,その後減少し,2021年度は955名であった.性別患者数は,いずれの年度においても男女比がおよそ1:2であった.年齢別患者数は1996年度から2001年度は50歳代,2006年度以降は60歳代が多く高齢化の傾向がみられたが,2021年度では50歳代が最も多かった.来院理由別患者数はインプラント治療希望が8割を占め,他の年度と大きな変化はなかった.他院で治療したインプラントの不調を主訴とする患者は,1996年度以降2011年度まで増加し,2016年度では横ばいであったが,2021年度では減少した.2021年度では新来患者総数や高齢患者数の減少がみられたが,これは新型コロナウイルス感染症の流行による影響が関連していると考えられる.

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