2018年の米国歯周病学会と欧州歯周病連盟によるコンセンサスレポートにおいて発表されたインプラント周囲疾患の新分類,診断基準および活用方法について解説する.
インプラント周囲粘膜の炎症は発赤,腫脹などの肉眼的所見,線状あるいは粒状のプロービング時出血(BOP)およびインプラント周囲ポケットからの排膿から診断する.インプラント周囲の組織破壊は,2時点のエックス線画像およびプロービング時ポケット深さ(PPD)を比較し,インプラント周囲骨における進行性の骨吸収,あるいはPPDの深部化から診断する.一方,このような経過観察データがない場合は,3 mm以上の骨吸収あるいは6 mm以上のPPDを組織破壊と診断する.そして,インプラント周囲組織に炎症も組織破壊も認めない状態を健全,粘膜に炎症を認めるが組織破壊を伴わない病態をインプラント周囲粘膜炎,両方を認める病態をインプラント周囲炎と診断する.
インプラント周囲疾患の診査診断は,歯周疾患と対比してBOP,排膿,PPDおよび病的骨吸収に対する解釈が異なる.エックス線画像あるいはPPDの経時的変化を診断することは容易ではない.歯周疾患は口腔単位で,インプラント周囲疾患はインプラント単位で診断する.そのため,これらの特異事項をインプラント周囲疾患の専用診査用紙に記入し,口腔単位の歯周疾患とインプラント単位のインプラント周囲疾患を併記して診断および記録する必要があろう.
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