2023 年 36 巻 2 号 p. 89-99
2018年にEuropean Federation of Periodontology(EFP)とAmerican Academy of Periodontology(AAP)の合同ワークショップに基づいた,新しい歯周病の分類が発表された.新基準によるインプラント周囲炎の診断は,BOP(bleeding on probing),PPD(probing pocket depth),エックス線検査による骨吸収の検査を基準としている.インプラントの上部構造装着後の検査結果と比較し,PPDの増加,エックス線検査による骨吸収の増加,BOPによる出血または排膿を基準として診断すると明記された.過去の検査データがない場合には,BOP陽性,PPD≧6 mm,骨吸収≧3 mmを基準とするとした.BOPについては,25 g以下または同等の弱圧で行うことが注意喚起されている.エックス線検査による骨吸収の増加には,initial bone remodelingを超えた骨吸収と記載された.このリモデリングは二回法インプラントにおいて,二次手術後にアバットメント装着後などインプラント体上部が口腔内に露出した後,6か月から1年以内に生じる骨吸収である.Biologic widthまたはsupracrestal tissue attachmentに準じた正常な骨吸収像である.Implant-abutment junctionから下降する上皮付着を,インプラント体よりも径の細いアバットメント(non-matching morse taper type)を使用し,上皮の下降方向を水平方向に変えることで,垂直的な上皮下降を減少させることができる.このnon-matching morse taper typeがplatform switchingと呼ばれる.この正常なリモデリングをインプラント周囲炎による骨吸収と間違えないように,明確に区別した.骨のリモデリングに影響を及ぼす因子は,implant-abutment junctionの結合様式とインプラント体の埋入深度である.それによって決まる,インプラント体と上部構造物とのマイクロギャップの垂直的な位置が重要である.