日本口腔インプラント学会誌
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特集 インプラント治療の術前後のトラブル対応に役立つ薬剤の知識
口腔インプラント治療における薬剤の知識をアップデート
服部 洋一高岡 一樹岸本 裕充
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2023 年 36 巻 4 号 p. 248-256

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抄録

インプラント治療を希望する患者が全身合併症を有し,薬剤を使用していることはしばしばある.長期的にインプラントを安定させるためには,歯科医が処方する薬剤はもちろん,医科で処方される薬剤に関しても適切な知識をもつことが必須であり,常に知識のアップデートが求められる.

歯科医が処方する薬剤として,抜歯やインプラント治療のいずれにおいても抗菌薬の予防投与は手術直前に行うべきであり,抗菌スペクトルおよびバイオアベイラビリティの面からアモキシシリンの使用を推奨する.鎮痛薬は腎障害など副作用の多いNSAIDsの使用は避け,アセトアミノフェンの使用を推奨する.

一方,医師が処方する薬剤として,直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)を使用している患者では,ワルファリンにおけるPT-INRのような有効なモニタリング指標はないが,半減期を考慮し手術時間を調整することで出血リスクを減らすことができる.骨粗鬆症で骨吸収抑制薬を使用している患者にインプラント手術は禁忌ではないが,薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)リスクを十分考慮したうえで行う.インプラント関連MRONJは,埋入手術でなく,インプラント周囲炎を契機に発症するものが多くを占めており,治療計画の立案における配慮が求められる.

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© 2023 公益社団法人日本口腔インプラント学会
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