2024 年 37 巻 3 号 p. 214-220
顎骨に埋入されたインプラント体が口腔内に長く保持されるためには,上部構造に負荷される応力とのバランスを保つことが重要であり,インプラントに与える咬合の重要性が強調されてきた.咬合による負荷はインプラント上部構造に受容され,アバットメントを介して応力は骨組織に伝わり,天然歯とは異なった生体反応により恒常性が保たれている.インプラント周囲組織に存在する骨細胞によるネットワーク形成といった生物学的な研究が明らかになるなかで,従来より提唱されてきた「インプラントを守る」という咬合理論は,近年の臨床エビデンスの蓄積により,インプラントと天然歯の共存のためにも適用できると考えられる.特に臼歯部の咬合接触はインプラント体に大きな負荷がかかることから,クレンチングなどの機能状態での検査が必要であり,上部構造連結時には生体との適合性に細心の注意を払うべきである.また長期間安定した予後のためには,力のコントロールが必須である.