2025 年 38 巻 1 号 p. 5-12
インプラント治療は,メインテナンス主導へ時代とともに移行しなければならない.著者らがインプラント治療に携わって35年が経過するが,当初はインプラント手術にフォーカスが当たっていた.インプラントが普及するにつれてインプラントを入れたはいいが,補綴するのに不都合がでることを経験するようになった.そこでトップダウントリートメント・補綴主導のインプラント治療が提唱されるようになった.CTなどの診断技術の向上もあり,治療着手前に細かく上部構造,すなわち補綴がイメージできるようになり,臨床では成果を上げつつある.
上部構造装着がインプラント治療のゴールではなくて,第二のスタートであることを術者,患者ともに認識しなければならない.上部構造装着までの期間が長くとも2年程度であるのに対して,上部構造を維持管理していく時間は,著者らの臨床でも30年を超えるケースも出てきており,圧倒的に後者のほうが長い期間になる.補綴主導を一歩進めたメインテナンス主導というコンセプトのほうが日常臨床を考えると実態に即している.
メインテナンスにおいて最も大切なことはインプラント周囲疾患を予防し,発症を認めた場合は重症化を食い止めることである.日々の臨床においてインプラントを守るために,実際に著者らが診療室で取り組んでいるインプラント周囲疾患に対する取り組みとしてのメインテナンスの実際,注意点,改善点について述べる.