我々は,インプラント撤去基準,撤去後の再治療の選択基準を考察した.撤去時に考慮すべき事項は,1.インプラント周囲炎進行度,2.患者の全身状態,3.インプラント体のメインテナンスの難易度,4.埋入後の経過年数,5.患者の家族の希望,である.
歯科医の立場での撤去基準は,1.インプラント周囲炎の進行度,2.撤去後の骨吸収,3.撤去後の併発症リスク,4.インプラント体の動揺,5.インプラント再埋入の必要性,6.患者の年齢が若い,である(程度が大きいほど積極的に撤去).患者の立場での撤去基準は,1.疼痛,2.再埋入の希望,3.撤去手術の苦痛が少ない,4.手術の費用が安価,5.手術の安全性,6.年齢が若い,7.患者家族の撤去希望,である(程度や希望が大きいほど積極的に撤去する).
撤去後のリカバリー処置は,1.再度インプラント埋入,2.義歯による補綴,3.何もせずに経過観察,の3つに分ける.3.の何もせずに経過観察には,残存インプラントを骨内に残すスリーピング処置も含む.1.の再インプラント埋入は以下の3つに分類される.1)インプラントを撤去したすべての部位への再埋入,2)部分的に撤去した部位への再埋入,3)撤去後に残ったインプラントによるリカバリー(Implant Over Denture:IODへの変更,上部構造の変更など).
再インプラント治療のメリットは撤去前の機能を回復できることである.デメリットは,再手術が必要になる,骨造成や歯肉移植などの付加手術が必要,撤去に至った原因を排除する必要がある,再埋入まで6か月から1年ほど期間を空ける必要がある,などである.これらも撤去基準と同様に歯科医と患者の立場で部分的に異なる.
再インプラント埋入は,患者と歯科医の両方が希望したときにのみ選択される.患者が治療を希望しないときや再インプラント治療が困難なときは,インプラント以外のリカバリー治療を考える必要がある.