抄録
われわれは浅側頭動脈より超選択的動注法を用いた連日同時放射線化学療法が著効した口底粘表皮癌の1例を経験したので,その概要を報告する。
下顎の疼痛とオトガイ神経麻痺を主訴に60歳代の男性が当科を紹介され受診した。左側下顎臼歯部舌側歯肉に34×23mmの腫瘤を認めた。顎下部には固着性のリンパ節を認めた。CTでは下顎舌側に42×23mmの腫瘤が存在し下顎骨は吸収していた。生検の結果,粘表皮癌と診断された。浅側頭動脈より超選択的動注法を用いた連日同時放射線化学療法を受けた。CisplatinとDocetaxelの総投与量はそれぞれ224mg,111mgであった。外照射は1.8Gy/日で計50.4Gyを行った。臨床効果はPRであったため動注化学放射線治療終了4週後に下顎骨区域切除術,保存的頸部郭清術,腓骨皮弁による再建術を施行した。しかし,腫瘍とリンパ節は病理組織学的にCRと診断された。術後30か月経過するが,再発や転移なく経過良好である。