抄録
近年,マイクロサージェリーを用いた遊離組織移植が頭頸部領域に用いられている。しかしながら全身的合併症や移植床血管の問題などを認める症例では遊離組織移植より有茎皮弁による再建の方が安全で,より有用性が認められることがある。今回われわれは口腔癌切除後の大胸筋皮弁(pectoralis major musculocutaneous flap;PMMC flap),胸三角筋部皮弁(deltopectoral flap;D-P flap),頸部島状皮弁(cervical island skin flap;CIS flap)における有茎皮弁を用いた再建例についてその有用性について検討した。口腔癌切除後の組織欠損に対して有茎皮弁を用いて再建した症例は45症例であり,その内訳はPMMC flap;25例,D-P flap;9例,CIS flap;13例であった。また,その内の2例においてはPMMC flapとD-P flapの2皮弁による再建が行われていた。
皮弁完全生着率ではPMMC flapが96%であり,その他の皮弁は全て完全生着した。再建に要した手術時間を確認できた症例では,PMMC flap(n=11)とD-P flap(n=6)がそれぞれ3.1±0.7時間と2.6±1.1時間であり,また,CIS flapの挙上時間はだいたい20から30分であった。最も多かった術後の合併症は縫合不全による瘻孔であったが全ての症例では洗浄により治癒した。
有茎皮弁は口腔癌切除後の再建において有用な選択枝のひとつであると考えられた。