抄録
1998年4月から2011年3月までに当科で経験した口腔扁平上皮癌患者670例のうち,80歳以上の超高齢者患者51例(7.6%)について臨床的検討を行い,さらに80歳未満の対照群との比較検討を行った。
性別は,男性24例,女性27例を示し,対照群と比較し有意に女性の割合が高かった(P=0.035)。発生部位は,歯肉が20例(39.2%)と最も多く,次に舌が19例(37.3%)であった。病期分類は,I期が17例(33.3%),II期が21例(41.2%),III期が5例(9.8%),IV期が8例(15.7%)であった。合併基礎疾患を有している症例は90.9%に認められ,対照群と比較して有意に高かった(P=0.026)。治療態度は,43例(84.3%)に対し根治的治療が施行され,8例(15.7%)に対し姑息的治療が施行されており,超高齢者群は対照群と比較して有意に根治的治療が施行される割合が低かった(P<0.001)。治療成績においては,根治的治療が施行された超高齢者群および対照群における5年疾患特異的生存率はそれぞれ79.4%,82.1%であり,ほぼ同程度であった。しかし,超高齢者群における全死亡数のうち,口腔癌による死亡数は52.6%であり,80歳以上の超高齢者患者の約半数が他病死にて亡くなっていた。