2015 年 27 巻 1 号 p. 7-12
われわれは左側舌に発症した腺扁平上皮癌を経験したので報告する。患者は80歳男性,左側舌に潰瘍を伴う無痛性の腫瘤を認めたため当院紹介となった。臨床所見として左側舌に30×30mmの硬結を伴う腫瘤を認めた。MRI所見にてT1強調像で低信号,T2強調像で中等度の高信号を呈する腫瘤を認めた。生検術の結果,癌の診断を得たが,詳細な確定診断を得ることはできなかった。MRI,CT,エコー,FDG-PETそれぞれの画像評価にて頸部リンパ節,全身転移を疑う所見は認められなかったため,左側舌半側切除術,左側肩甲舌骨筋上頸部郭清術,左前腕皮弁による舌再建術を施行した。手術標本において,腺扁平上皮癌の確定診断を得,病理学的に2つの転移リンパ節を認めた。術後1年4か月経過するが,原発,頸部ともに再発を認めず,また全身転移もなく経過良好である。