日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
シンポジウム3:「口腔癌のTNM分類を考える」
下顎歯肉癌の下顎管分類はどのようにしてできたか,その成り立ちを振り返る (原著)
藤林 孝司
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 28 巻 3 号 p. 88-102

詳細
抄録

日本口腔腫瘍学会は1993年の学術集会で下顎歯肉癌のT分類に関するワークショップを初めて開催した。そこで12の分類案が示され議論したが結論をえることができず,全国から多数の下顎歯肉癌症例を集めてさらに検討することが合意された。そこで集積した1,187症例の登録症例について提案された12の分類法を適用してT分類別,stage別症例分布,T別,stage別生存率,因子分析,数量化理論2類による多変量解析,Tと原発巣手術法との偏相関係数,TNMと予後との重相関係数,その他について検討した結果,下顎歯肉癌のT分類法としては下顎管分類が最も妥当であるとの結論であった。ついで登録症例で原発巣外科的手術後の再発について解析し,その結果から下顎管分類でT分類を行い,骨吸収程度と骨吸収様式を考慮した場合の原発巣の各種外科手術後の局所再発率を数量化理論2類にて予測し,再発の相対危険度をロジステック回帰分析にて算定し,その結果をもとに望ましい下顎歯肉癌の原発巣外科手術法を提案した。このような下顎管分類とそれに基づく治療法の概念は口腔癌診療ガイドライン,口腔癌取扱い規約にも取り入れられ,今日では口腔癌診療の標準となっている。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top