日本口腔腫瘍学会誌
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28 巻, 3 号
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第34回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
シンポジウム2:「口腔癌N0症例の頸部マネージメント」
  • 浜川 裕之
    2016 年 28 巻 3 号 p. 49
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
  • ―経過観察 vs 予防郭清か?―
    大倉 正也
    2016 年 28 巻 3 号 p. 50-56
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌N0頸部の治療戦略は,現在も議論の的であり,今まで多くの研究発表がなされている。最近の大規模なランダム化比較試験やNCCNのガイドラインではある条件で予防郭清を推奨しているものの,まだ多くの疑問が残されている。本研究では,現在までに尽くされた議論を疑問とともに再考しながら,本邦におけるN0頸部の治療戦略についてどのように実臨床に生かしていくべきかを考えていく。
  • 湯浅 賢治, 香川 豊宏, 白石 朋子, 三輪 邦弘, 山本 千佳, 吉田 祥子
    2016 年 28 巻 3 号 p. 57-64
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌からの頸部リンパ節転移の画像診断における初診時の画像診断手順および超音波診断基準 (Bモードおよびドプラモード) やそれらの診断能について報告した。Bモードにおける転移リンパ節と非転移リンパ節との鑑別のための診断基準は,(1) 強い内部エコーが認められる場合は転移リンパ節を疑う。(2) hilar echoesの存在は非転移リンパ節である。(3) 長短経比が3.5以上であれば非転移リンパ節である。転移リンパ節を診断する敏感度は66%と高くないが陽性的中度は97%と高かった。
    ドプラモードにおける転移リンパ節の診断基準は,(1) リンパ節内部に圧排された血管像があれば転移リンパ節を疑う。(2) リンパ節内部に散在性の血流像があれば転移リンパ節を疑う。(3) リンパ節辺縁に沿って走行する血管像があれば転移リンパ節を疑う。(4) 門部から樹枝状に走行する血流像があれば非転移リンパ節である。
    ドプラモードとBモードを併用した場合の敏感度は84.1%であり,Bモード単独での診断より有意に高かった。しかしながら,診断能はリンパ節のサイズに大きく左右される。そこで,転移リンパ節サイズの変化に伴うリンパ節内の血流量の変化に着目した。小さな転移リンパ節はサイズの増大に伴い血流量が増大し,さらにサイズが増大すると血管像は散在性を呈する。
    経過観察時における頸部リンパ節の画像検査は超音波検査が中心となる。適切な超音波検査間隔は術後1年目においては1か月に1度であると考える。また,原発巣の超音波ドプラ所見は腫瘍活性を表すので,腫瘍の病理組織学的悪性度や頸部リンパ節転移出現の予測因子である。
  • 岩井 俊憲, 小栗 千里, 吉井 悠, 大橋 伸英, 林 雄一郎, 飯田 昌樹, 中島 英行, 小泉 敏之, 廣田 誠, 來生 知, 光藤 ...
    2016 年 28 巻 3 号 p. 65-70
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌N0症例のうち20~30%の頻度で後発頸部リンパ節転移が生じるが,経過観察するか予防的頸部郭清術を行うかといった頸部に対する治療方針に統一した見解は得られていない。様々な画像診断が行われるにも関わらず頸部リンパ節転移を正確に診断することは困難であるため,色素法,ラジオアイソトープ (RI) 法,あるいはその両者を用いたセンチネルリンパ節生検(SLNB)が近年行われるようになってきた。しかし,RI法を用いたSLNBはどの施設でも行えるわけではない。そのため,RIを用いない方法として,口腔癌N0症例に対するインドシアニングリーン (ICG) 蛍光法を用いたSLNBについて報告する。
  • 合田 啓之, 中城 公一, 日野 聡史, 村瀬 隆一, 浜川 知大, 浜川 裕之
    2016 年 28 巻 3 号 p. 71-75
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節転移の有無は口腔癌の重要な予後因子である。cN0症例に対する治療方針としての,予防的頸部郭清術や経過観察についてはいまだ議論の余地があるのが現状である。センチネルリンパ節生検(SNB)は,様々な癌種において臨床応用がなされてきた。口腔癌におけるSNBの目的は,cN0症例に対し,頸部郭清術を行うか否かを決定することにある。しかしながら,口腔癌のSNBにおいては,以下の4つの問題点がある。すなわち,RIの使用,shine-through現象,潜在転移診断法とEBMの不足である。本稿では,口腔癌におけるセンチネルリンパ節生検の現状について解説する。
  • ―センチネルリンパ節生検と未来展望―
    土持 眞, 山口 晴香, 羽山 和秀
    2016 年 28 巻 3 号 p. 76-85
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    センチネルリンパ節生検は早期のリンパ節転移のstagingに多くの悪性腫瘍で行われている。その悪性黒色腫や乳癌のN0症例の診断精度は95%以上と報告されている。この術式では外科医が手術室でγプローブを用いてRIの放射線量を計測してセンチネルリンパ節を探索する。この方法では外科医は良好な空間分解能で集積画像を見ることはできない。小型のγカメラを使用することができるが解剖学的情報の中で集積を見つけることはできない。色素などを併用する方法が行われているが,これは切開した部分のみに限られる。蛍光の組織透過性が良好なことから,近年indocyanine green(ICG)を用いた近赤外蛍光のセンチネルリンパ節生検が行われている。私たちはpolyamidoamine(PAMAM)をグラフトした多機能シリカナノ粒子を使用して99mTcとICGを結合させた複合イメージングプローブを開発した。動物実験で組織深部はRIで探索し,そして切開して近赤外蛍光でセンチネルリンパ節を検出して手術操作を容易にする可能性を明らかにした。さらに私たちは直接にセンチネルリンパ節転移細胞をイメージングする方法の研究も実施している。そして本総説では最近のセンチネルリンパ節転移検索のための分子標的イメージングの進歩についてreviewする。
シンポジウム3:「口腔癌のTNM分類を考える」
  • 太田 嘉英
    2016 年 28 巻 3 号 p. 87
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
  • 藤林 孝司
    2016 年 28 巻 3 号 p. 88-102
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    日本口腔腫瘍学会は1993年の学術集会で下顎歯肉癌のT分類に関するワークショップを初めて開催した。そこで12の分類案が示され議論したが結論をえることができず,全国から多数の下顎歯肉癌症例を集めてさらに検討することが合意された。そこで集積した1,187症例の登録症例について提案された12の分類法を適用してT分類別,stage別症例分布,T別,stage別生存率,因子分析,数量化理論2類による多変量解析,Tと原発巣手術法との偏相関係数,TNMと予後との重相関係数,その他について検討した結果,下顎歯肉癌のT分類法としては下顎管分類が最も妥当であるとの結論であった。ついで登録症例で原発巣外科的手術後の再発について解析し,その結果から下顎管分類でT分類を行い,骨吸収程度と骨吸収様式を考慮した場合の原発巣の各種外科手術後の局所再発率を数量化理論2類にて予測し,再発の相対危険度をロジステック回帰分析にて算定し,その結果をもとに望ましい下顎歯肉癌の原発巣外科手術法を提案した。このような下顎管分類とそれに基づく治療法の概念は口腔癌診療ガイドライン,口腔癌取扱い規約にも取り入れられ,今日では口腔癌診療の標準となっている。
  • ―cNとpNはどれくらい一致するのか―
    道 泰之, 香月 佑子, 水谷 美保, 三浦 千佳, 大山 厳雄, 名生 邦彦, 鵜澤 成一, 山城 正司, 山口 聰
    2016 年 28 巻 3 号 p. 103-108
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    【目的】N分類の問題点を検証することを目的に臨床的検討を行った。【対象と方法】当科を受診した口腔扁平上皮癌一次症例のうち,一次治療として外科療法を選択し,原発巣と同時に頸部郭清術を施行した患者で,術後原発巣再発を認めず,頸部への術前照射を行っていない281例を対象とした。頸部リンパ節の診断には触診・超音波・CT・MRI・PET/CTを用い,頸部リンパ節転移の有無と進展範囲を示す臨床分類(cN)と病理組織学的分類(pN)の一致率,各種診断法の診断精度を検討した。【結果】N分類の診断一致率は全体で60.5%であった。cN1は最も低く30.2%であった。各種診断法のうち特異度が最も高いのは超音波診断で86.3%,感度はPET/CTで74.7%であった。
    【結論】各種診断法の特性を組み合わせ,より正確なN診断を行う必要性があると考えられた。
  • 長塚 仁
    2016 年 28 巻 3 号 p. 109-113
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    口腔癌における病理診断の標準化は,全国がん登録の義務化やがん治療の均霑化を図る上で極めて重要と考えられる。口腔癌の病理診断の標準化にあたっては,診断におけるシステムの問題が課題としてあげられ,そのなかには疾患概念や用語が含まれる。疾患概念や用語の統一は,臨床医と病理医の連携・病理医間での連携において診断の標準化の基盤となる。国際的な視点からは,口腔癌とその境界病変の病理診断に用いる用語や定義は,UICC分類と,組織についてはWHO分類が基準となる。口腔癌の規約に関しては,本邦ではUICCやWHO分類に,部位特異性を加味した口腔癌取扱い規約第1版,頭頸部癌取扱い規約第5版が使用されており,口腔という同一臓器に対して2つの規約が存在している。この2つの規約では,病理に関する記載事項において,疾患概念,記載順序,用語に違いがみられる。このような違いは,どちらの規約を用いたのかが明確にされないと齟齬が生じる可能性が高い。現在,日本口腔腫瘍学会では,口腔癌取扱い規約改訂の検討を行っている。口腔癌における病理診断の標準化を目指すために,新たな口腔癌取扱い規約では,関連する各学会とも緊密に連携しながら,今後予定されている国際基準であるUICC分類とWHO分類の改訂を踏まえて,国内規約および国際基準との整合性をとりながら改訂していく必要がある。
シンポジウム4:「臓器温存治療を目指して」
症例報告
  • 笠松 厚志, 福嶋 玲雄, 坂本 洋右, 椎葉 正史, 鵜澤 一弘, 丹沢 秀樹
    2016 年 28 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    IgA血管炎は,以前Henoch-Schönlein紫斑病と呼ばれており,IgA抗体優位の免疫複合体が小血管へ沈着することで発症し,進行するとネフローゼ症候群や腎障害を併発する疾患である。今回われわれは,84歳女性で左側上顎歯肉癌の術後33日目に両側下肢に紫斑を認めた症例を報告する。臨床症状および生検結果からIgA血管炎と診断された。ジアフェニルスルホンおよびプレドニゾロンの内服により紫斑および腎機能が改善し,以後,原疾患の上顎歯肉癌の再発および紫斑の再燃を認めず経過良好である。
  • 見立 英史, 川野 真太郎, 松原 良太, 橋口 有真, 金子 直樹, 坂本 泰基, 中村 誠司
    2016 年 28 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,頸部郭清術後にリンパ漏を認め,陰圧閉鎖療法(NPWT)を行って治癒し得た2症例を経験したので報告する。【症例1】71歳,男性。左側頬粘膜扁平上皮癌(T2N2bM0)に対し,術前放射線化学療法後,根治的頸部郭清術(RND),上顎部分切除術,頬粘膜部分切除術,下顎区域切除術,前外側大腿皮弁とチタンプレートによる再建術を施行。術後より,鎖骨上窩にリンパ液貯留を認めていた。術後12日目,左側頸部の出血を認めたため,止血処置およびリンパ漏出部位の結紮を行った。しかし,術後もリンパ液貯留が継続したため,再手術から3日後にNPWTを開始した。開始1週間でリンパ漏は消退した。【症例2】64歳,男性。左側舌扁平上皮癌術後に頸部リンパ節後発転移を認め,RNDを施行。術後15日目に鎖骨上窩にリンパ液貯留を認め,症例1と同様にNPWTを開始した。徐々にリンパ漏は消失し,NPWTは26日間で終了した。NPWTは頸部郭清術後リンパ漏に対し,有用な治療法の1つになり得ると考えられた。
  • 成田 紀彦, 小林 恒, 中川 祥, 久保田 耕世, 伊藤 良平, 佐藤 寿, 今 敬生, 木村 博人
    2016 年 28 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2016/09/15
    公開日: 2016/09/23
    ジャーナル フリー
    N3リンパ節転移(レベルII)を伴う口腔癌2症例に対して超選択的動注化学放射線治療を行った。治療は66Gyの外照射とともにドセタキセル(40mg/m2)とネダプラチン(80mg/m2)を大腿動脈経由に3回から4回の動注化学療法を行った。すべての症例で抗癌剤の局所濃度を高めるために不要な血管を閉塞させる血流改変術を行った後に外頸動脈より動注した。その結果,全ての症例で原発巣とともに転移リンパ節も消失し,頸部郭清術は施行されなかった。経過中に原発巣・頸部リンパ節の再発は認めなかったが,1例において全身多発転移が生じ,化学療法を行うも制御できずに死亡した。超選択的動注化学放射線治療は原発巣のみならずN3リンパ節転移に対しても有効な治療であると考えられた。
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