日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム5:「救済手術について」
導入化学療法後の救済手術(総説)
上田 倫弘山下 徹郎林 信高後 友之細川 周一山下 新之助新山 宗中嶋 頼俊
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2016 年 28 巻 4 号 p. 225-231

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抄録

進行口腔癌に対する根治性の向上,外科的切除の回避,遠隔転移予防の観点から,顎口腔癌に対する導入化学療法(induction chemotherapy:ICT)としてのTPF療法(TPF-ICT)が期待されている。しかし,毒性が高く重篤な副作用も報告され切除可能例では慎重な取り扱いが要求される。重篤な副障害症例や効果が低い症例では,本療法を打ち切り,後続治療へsequenceしている。後続治療は,切除可能例では手術が選択され,切除不能例では放射線治療が選択される。さらに放射線治療後の残存腫瘍は可能であれば切除手術を施行している。
病期 IV の進行口腔扁平上皮癌に対してTPF-ICTを行ったのは49例で,原発巣の奏効率は57.1%で頸部リンパ節は65%であった。有害事象では,Grade 3以上の血液毒性は白血球減少が49例中37例 (75.5%),Hb減少16例 (32.7%),血小板減少11例 (22.4%) であった。その他のGrade 3以上の障害は,腎不全1例,悪心嘔吐1例,食欲不振2例,下痢3例であった。また,晩期障害として末梢神経障害を19例 (38.8%) に認めた。TPF-ICT後に手術を施行したのは37例 (TPF–RT後:6例,TPF後:31例) であった。放射線併用超選択的動注化学療法後に救済手術を行った42例を比較対象として,手術時間,出血量,局所合併症,皮弁生着率,救済率を検討したところ,TPF-ICT群で手術時間のみが有意に短縮し,合併症発生率,皮弁生着率,救済率について有意差はなかった。救済手術後の2年全生存率はTPF導入療法:70.5%,CCRT-HFT:52.1%で,3年全生存率ではそれぞれ59.2%,50%であった。TPF-ICTは,進行顎口腔癌に対する有効な治療法と考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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