日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
口腔がん再建術後に中心静脈カテーテル関連深部静脈血栓症を生じた2例
―DVTに対する歯科医師の対応について―
秦 浩信佐藤 明宮腰 昌明吉川 和人清水 六花林 利彦箕輪 和行北川 善政
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2017 年 29 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

口腔癌の血管柄付遊離皮弁再建術後に生じた中心静脈カテーテル関連深部静脈血栓症を2例経験したので報告するとともに,北海道大学病院では2014年7月から「歯科医師のための血栓発見時の対応マニュアル」の運用を行っているので紹介する。
症例1: 60歳男性。右口底癌cT4aN1M0の診断で,2010年5月に右頸部郭清術,口底悪性腫瘍切除術,前外側大腿皮弁による再建術を施行した。麻酔の導入時に大腿静脈より中心静脈カテーテルが挿入され,術後5日目で抜去した。術前の4月の上部消化管内視鏡検査で早期胃癌が発見されたため,内視鏡的粘膜剥離術を予定し,8月に腹部造影CTを撮像したところ,下大静脈内に7cm長の血栓が認められた。深部静脈血栓症の診断のもと循環器内科の指示でワルファリンカリウムの内服を開始した。2週後の腹部造影CTで下大静脈血栓の縮小を認め,2か月後に血栓の消失が確認された。
症例2: 69歳女性。左舌癌cT2N0M0の診断で,2014年2月に左頸部郭清術,舌亜全摘術,前外側大腿皮弁による再建術を施行した。麻酔の導入時に大腿静脈より中心静脈カテーテルが挿入され,術後7日目で抜去した。術後1週間でプロスタグランジンE1製剤が原因と考えられる薬剤性肝機能障害を認めたため,腹部超音波検査,腹部造影CTを施行した。その際に,右大腿静脈,右総腸骨静脈~下大静脈にかけて血栓形成が発見され,深部静脈血栓症の診断のもとヘパリンナトリウムを開始した。1週間後の腹部造影CTにて血栓の消失が確認された。

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