日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム2:「口腔がん治療における周術期口腔機能管理とは?」
がん手術時の口腔管理方法の標準化に向けて
船原 まどか五月女 さき子梅田 正博
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2019 年 31 巻 3 号 p. 106-110

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抄録

がん手術時の手術部位感染や術後肺炎のリスクを低下させる目的で周術期口腔機能管理が広く行われるようになったが,管理方法の標準化が課題である。今回われわれが行ってきた臨床研究をもとに,がん手術時の適切な口腔管理方法について検討した。
手術後には唾液中細菌数は増加する。頭頸部がん,上部消化管がんなどの手術部位感染や,術後誤嚥性肺炎は唾液中の病原性微生物が原因の一つと考えられる。唾液中細菌数を減少させるためには,早期の経口摂食が最も重要で,経口摂食ができない場合は含嗽が有効である。含嗽ができない場合は消毒薬や抗菌薬の局所投与も考慮するべきである。また,口腔感染巣からの血行感染により離れた部位の感染を起こすこともあり,術前に口腔内の感染源の治療が必要である。
われわれの多施設共同研究により,周術期口腔管理を行うことにより口腔癌の手術部位感染,食道がんの術後肺炎,肺がんの術後肺炎,大腸がんの手術部位感染が減少することが示された。今後も口腔管理方法の標準化と有効性の検証が求められる。

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© 2019 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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