口腔癌N0症例の頸部リンパ節に対する治療態度には,予防的頸部郭清(END)と治療的頸部郭清(TND)がある。近年のランダム化比較試験の結果からENDの有効性が示唆されたが,ENDは約70%の症例が不要な手術を受ける可能性がある。当科では,口腔癌N0症例に対し,再建上の理由を除いて頸部郭清術を行っておらず,いわゆるWait-and-See policyを採用している。今回,当科における舌癌cT1-2N0症例の頸部後発転移の頻度や治療成績を評価し,頸部後発転移予測因子についても検討を行ったので報告する。
対象はcT1-2N0舌扁平上皮癌一次症例155例である。解析の結果,頸部後発転移を28例(18.1%)に認めた。TNDは頸部後発転移28例中24例(85.7%)に実施し,21例(87.5%)で頸部制御可能であった。対象症例全体の全生存率は88.0%であったが,頸部後発転移ありの群は有意に予後不良であった。一方,舌癌T1-2N0症例の頸部後発転移に関連する特徴として,大多数の患者に病理学的DOI(pDOI) ≥ 4.0mm,WPOI=4, 5,腫瘍の蔟出(TB) ≥ 4個のいずれかの所見を認めた。
舌癌cT1-2N0症例に対して原発巣切除のみを施行した際にDOI ≥ 4.0mm,WPOI=4, 5,TB ≥ 4個のいずれかの所見を認める場合には,特に厳重な経過観察を行い,早期発見に努める必要があることが示唆された。今後は,術前の段階において頸部後発転移の予測に有用な因子を探索することが重要であると思われた。
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