日本口腔腫瘍学会誌
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31 巻, 3 号
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第37回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
シンポジウム2:「口腔がん治療における周術期口腔機能管理とは?」
  • 勝良 剛詞, 五月女 さき子
    2019 年 31 巻 3 号 p. 105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
  • 船原 まどか, 五月女 さき子, 梅田 正博
    2019 年 31 巻 3 号 p. 106-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    がん手術時の手術部位感染や術後肺炎のリスクを低下させる目的で周術期口腔機能管理が広く行われるようになったが,管理方法の標準化が課題である。今回われわれが行ってきた臨床研究をもとに,がん手術時の適切な口腔管理方法について検討した。
    手術後には唾液中細菌数は増加する。頭頸部がん,上部消化管がんなどの手術部位感染や,術後誤嚥性肺炎は唾液中の病原性微生物が原因の一つと考えられる。唾液中細菌数を減少させるためには,早期の経口摂食が最も重要で,経口摂食ができない場合は含嗽が有効である。含嗽ができない場合は消毒薬や抗菌薬の局所投与も考慮するべきである。また,口腔感染巣からの血行感染により離れた部位の感染を起こすこともあり,術前に口腔内の感染源の治療が必要である。
    われわれの多施設共同研究により,周術期口腔管理を行うことにより口腔癌の手術部位感染,食道がんの術後肺炎,肺がんの術後肺炎,大腸がんの手術部位感染が減少することが示された。今後も口腔管理方法の標準化と有効性の検証が求められる。
  • 西井 美佳, 五月女 さき子, 長谷川 巧実, 柚鳥 宏和, 川北 晃子, 兒島 由佳, 船原 まどか, 梅田 正博, 明石 昌也, 古森 ...
    2019 年 31 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    口腔・中咽頭がん放射線治療患者326例の口腔粘膜炎と口腔カンジダ症について後ろ向きに検討し,以下の結果を得た。
    1.グレード3口腔粘膜炎は,326例中131例(41.7%)に生じた。
    2.グレード3口腔粘膜炎の発症リスク因子として,男性,中咽頭原発,シスプラチンやセツキシマブ併用,白血球低値・リンパ球低値・ヘモグロビン低値,経口摂取が挙げられた。
    3.口腔カンジダ症は,326例中101例(31.0%)に生じた。
    4.口腔カンジダ症発症のリスク因子として,中咽頭原発,白血球減少,グレード2以上の口腔粘膜炎が挙げられた。ステロイド軟膏はリスク因子ではなかった。
  • 兒島 由佳, 河岡 有美, 川下 由美子, 山田 慎一, 栗田 浩, 長谷川 巧実, 古森 孝英, 明石 昌也, 上田 順宏, 桐田 忠昭, ...
    2019 年 31 巻 3 号 p. 117-120
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    2008年〜2017年に6施設で放射線治療を行った口腔・中咽頭がん患者366例において,放射線顎骨壊死(ORN)の発症リスク因子をCox比例ハザードモデルにて解析した。その結果,根尖病巣,重度歯周病,血清クレアチニン上昇がORN発症リスクを有意に増大させ,IMRT,照射前抜歯がリスクを有意に低下させた。照射後抜歯は有意ではなかったがリスクを増加させた。今後,ORNの発症予防法を確立する必要がある。
シンポジウム4:「予防的頸部郭清術はどのような症例で有用か?」
  • 道 泰之, 比地岡 浩志
    2019 年 31 巻 3 号 p. 121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
  • =Wait-and-Seeの観点から=
    吉田 遼司, 坂田 純基, 山名 啓介, 郷原 俊輔, 川口 翔, 永尾 優果, 川原 健太, 廣末 晃之, 永田 将士, 福間 大喜, 平 ...
    2019 年 31 巻 3 号 p. 122-130
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌N0症例の頸部リンパ節に対する治療態度には,予防的頸部郭清(END)と治療的頸部郭清(TND)がある。近年のランダム化比較試験の結果からENDの有効性が示唆されたが,ENDは約70%の症例が不要な手術を受ける可能性がある。当科では,口腔癌N0症例に対し,再建上の理由を除いて頸部郭清術を行っておらず,いわゆるWait-and-See policyを採用している。今回,当科における舌癌cT1-2N0症例の頸部後発転移の頻度や治療成績を評価し,頸部後発転移予測因子についても検討を行ったので報告する。
    対象はcT1-2N0舌扁平上皮癌一次症例155例である。解析の結果,頸部後発転移を28例(18.1%)に認めた。TNDは頸部後発転移28例中24例(85.7%)に実施し,21例(87.5%)で頸部制御可能であった。対象症例全体の全生存率は88.0%であったが,頸部後発転移ありの群は有意に予後不良であった。一方,舌癌T1-2N0症例の頸部後発転移に関連する特徴として,大多数の患者に病理学的DOI(pDOI) ≥ 4.0mm,WPOI=4, 5,腫瘍の蔟出(TB) ≥ 4個のいずれかの所見を認めた。
    舌癌cT1-2N0症例に対して原発巣切除のみを施行した際にDOI ≥ 4.0mm,WPOI=4, 5,TB ≥ 4個のいずれかの所見を認める場合には,特に厳重な経過観察を行い,早期発見に努める必要があることが示唆された。今後は,術前の段階において頸部後発転移の予測に有用な因子を探索することが重要であると思われた。
  • 大鶴 光信
    2019 年 31 巻 3 号 p. 131-136
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    T1-2N0M0舌扁平上皮癌患者に対し予防的頸部郭清術を行うことの是非を検討した。多施設共同試験と決定樹解析試験を行った。その結果,腫瘍の深さを基準に予防的頸部郭清術を決めることが有用と思われた。予防的頸部郭清術を行う基準としては,腫瘍深さ4~5mm以上が妥当であった。しかし,年齢を考慮する必要性が考えられた。
  • (センチネルリンパ節生検症例から考える予防的頸部郭清術の適応と今後の課題)
    合田 啓之, 中城 公一, 日野 聡史, 栗林 伸行, 徳善 紀彦, 内田 大亮
    2019 年 31 巻 3 号 p. 137-142
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    近年の治療法の向上にもかかわらず,約30年の間,早期口腔癌の治療成績は改善を認めていない。早期口腔癌における頸部リンパ節転移の有無は最も重要な予後因子である。それゆえに,頸部リンパ節転移の早期発見は予後の改善につながると考えられる。cN0症例における頸部マネージメントについては,経過観察もしくは予防的頸部郭清術のいずれかが選択されてきており,長年の論点となってきた。センチネルリンパ節生検は多くの領域で受け入れられている方法であり,口腔癌においては頸部郭清術の適否を判断する検査法である。本研究ではセンチネルリンパ節生検症例の同定部位,転移陽性レベル等から予防的頸部郭清術の適否について検討を行うとともに,今後の展望について述べる。
原著
  • 坪井 香奈子, 黒嶋 雄志, 吉川 和人, 佐藤 明, 北川 善政
    2019 年 31 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    当科における口腔扁平上皮癌の原発巣再発症例に関する臨床病理学的検討を行った。2006年から2015年までに根治的手術を行った口腔扁平上皮癌121例を対象とした。121例中原発巣再発は16例(13.2%)に認めた。そのうち14例(87.5%)が24か月以内の再発であった。原発巣再発に関連するリスク因子を検討したところ,単変量解析ではT分類と神経周囲浸潤で有意差を認めた。多変量解析では,神経周囲浸潤(オッズ比: 11.2,95%CI:2.28〜63.4)が独立したリスク因子であった。救済療法は原発巣再発16例のうち12例(75%)に行われた。そのうち9例に救済手術が適応され,7例(78%)が救済可能であった。救済手術症例における原発巣再発後の生存期間中央値は40か月(8.5〜112か月)であった。一方,放射線治療あるいは化学放射線治療を行った3例は,いずれも予後不良であり,原発巣再発後の生存期間中央値は4.9か月(4.8〜11か月)であった。救済療法後の予後に関連する因子を検索したところ,初回治療時のT分類およびstage分類,救済手術が有意なリスク因子であった。したがって,原発巣再発に対する救済療法は,患者の全身状態が手術侵襲を許容可能であれば,手術を考慮するべきと思われた。
臨床統計
  • —正誤表に準拠—
    吉田 祥子, 岸本 晃治, 村瀬 友里香, 伊原木 聰一郎, 吉岡 徳枝, 奥井 達雄, 長塚 仁, 佐々木 朗
    2019 年 31 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/22
    ジャーナル フリー
    UICCのTNM分類は,口腔癌の進行度評価の基準として使用されている。2016年に公表された第8版TNM分類では,T分類に浸潤の深さ(DOI),N分類に被膜外進展(ENE)が導入された。そして,われわれは,舌扁平上皮癌の手術症例を対象に,第7版と第8版TNM分類による評価を比較し,後者の実用性を本誌において報告した。さらに,2018年にUICCから正誤表が公表され,T2,T3,T4が訂正された。そこで本研究では,当科で手術を施行した舌扁平上皮癌107例について,正誤表に準拠して改めて検討を行った。
    正誤表に準拠して評価すると,1例がT3からT2に,3例がT3からT4aに変更された。第7版と比較すると,後発転移率がT1では低下し,T2では増加したが,第8版とは同様の結果であった。生存率は,第8版と同様に,Tの上昇とともに低下した。また,pTの変更に伴って,pStageが変更されたため,stageの上昇とともに生存率が低下した。
    訂正された第8版TNM分類は,進行度に即したTの細分化を舌扁平上皮癌においても実現し,細分化により進行度を的確に後発転移と生存率へ反映させており,実用的であると考えられた。
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