抄録
わが国における口腔癌の罹患率は上昇傾向にある。口腔癌は60歳以降の男性に多いとされてきたが,近年では若年者の割合が増加しているとされている。
1997年から2016年の間に,東京歯科大学口腔外科で加療を行った40歳未満の舌扁平上皮癌一次症例(若年者)36例を後ろ向きに検討した。同時期に加療した舌扁平上皮癌369 例のうち,若年者は9.8%であった。若年者の割合は,20年間で増加しており,男女比は1.25:1であった。病理組織学的分化度では,高分化型は75.0%であった。病期分類では,それぞれⅠ期47.1%, Ⅱ期19.4%,Ⅲ期22.2%,Ⅳ期16.7%であった。発症誘発因子においては,飲酒は若年者の38.9%に認められ,喫煙は41.7%に認められた。機械的刺激は91.7%に認められた。
5年全生存率は88.2%,5年無再発生存率は82.6%であり,他年齢群と比較し統計学的有意差は認めないものの,良好な傾向にあった。