【緒言】原発性中枢神経リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)は中枢神経に限局発生し,全悪性リンパ腫の1%未満である。また,他臓器由来の悪性リンパ腫が,初回検出時に中枢神経に浸潤していることもまれである。今回,左側下顎および左側頭葉にB細胞性リンパ腫が併存したまれな症例を経験したので報告する。
【症例】64歳,女性。左側下顎歯肉腫脹と下唇知覚鈍麻を自覚し,近在歯科医院より当科を紹介受診した。初診2か月前,脳ドックで左側頭葉腫瘤を指摘され,精査予定だった。初診時,左側下顎犬歯から大臼歯頰側歯肉に,弾性硬で正常粘膜色の腫瘤を認め,CTおよびMRIで左側下顎骨に溶骨性変化を伴う50mm大の病変を認めた。生検の結果,diffuse large B-cell lymphomaと診断された。脳腫瘤に対しても生検が行われ,下顎病変と同様に,B細胞性リンパ腫と診断された。当院血液内科でR-MPV療法施行され,寛解した。寛解導入後,化学療法中に生じた下顎骨病的骨折に対して,観血的整復固定術を施行した。しかし,2か月後,左側頭葉病変が再発,救済化学療法を施行されたが,再発5か月後,死亡した。
【結語】PCNSLは,まれな悪性リンパ腫であり,初診時に下顎病変を認めた症例は,渉猟し得た限り,認められない。治療中に生じた下顎骨の病的骨折に対して観血的整復固定術を施行したところ,経過中に明らかな固定の破綻は認められず,患者のQOLを維持できた。
抄録全体を表示