日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
エーラスダンロス症候群患者に発生した舌癌の1例
吉川 恭平野口 一馬山根木 康嗣吉田 和功森寺 邦康高岡 一樹岸本 裕充
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2021 年 33 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

エーラスダンロス症候群(以下EDS)は,関節の過可動性,皮膚の過伸展性,血管の脆弱性などを特徴とするまれな遺伝性疾患であり,現在13の病型に分類されている。なかでも血管型EDSは,動脈解離や動脈瘤破裂,腸管破裂などのリスクがある最も重篤な病型である。渉猟し得た限り,これまでにEDS患者に発生した口腔癌の報告はない。われわれは,血管型EDS患者に発生した極めてまれな舌癌の1例を経験したので概要を報告する。患者は48歳女性で左側舌縁に悪性腫瘍を疑う白色病変を認め,当科を受診した。全身麻酔による循環変動で生じ得る重篤な合併症を回避するために,静脈鎮静下にて切除生検を施行した。術中の循環動態は安定し,全身的合併症や異常出血は生じなかった。病理組織検査の結果,高分化型扁平上皮癌の診断を得た(pT1N0M0,stageⅠ)。創部治癒遅延を認めたが,術後13か月経過した現在再発なく経過している。

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© 2021 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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