日本口腔腫瘍学会誌
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症例報告
若年者の口蓋に発生した多形腺腫由来筋上皮癌の1例
柳生 貴裕下村 弘幸玉置 盛浩山川 延宏上田 順宏下村 都仲川 洋介桐田 忠昭
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2022 年 34 巻 3 号 p. 131-136

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抄録

多形腺腫由来癌は耳下腺に好発し,その癌腫成分の大半は唾液腺導管癌や腺癌not otherwise specified (NOS)である。そのため,多形腺腫由来筋上皮癌が小唾液腺に発生するのは極めてまれである。
今回われわれは,若年男性の口蓋に発生した筋上皮癌を癌腫成分とする多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。患者は35歳男性,左側口蓋部の無痛性腫脹を主訴に当科を受診した。MR画像では左側口蓋部に境界明瞭で,T1強調像で内部均一な筋肉と同程度の信号強度,T2強調像で内部不均一な中等度〜高度の信号強度を呈した腫瘤を認めた。生検では多形腺腫が疑われた。全身麻酔下に口蓋粘膜に5mmの安全域を設け,深部の筋肉と骨膜を含めて腫瘍を切除した。切除標本にて,筋上皮癌を癌腫成分として含む多形腺腫由来癌との病理組織診断を得た。切除断端に腫瘍細胞の露出はみられなかった。術後に行った頸部エコー,FDG-PET CTでは頸部リンパ節転移や遠隔転移を示唆する所見はみられなかった。拡大切除や放射線療法などの追加治療は行わず,患者の同意のもと経過観察の方針となり,術後11年経過するが再発,転移は認めず経過良好である。

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© 2022 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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