抄録
近年個々の遺伝子異常に応じて最適な治療を選択する「精密がん医療」の提供が強く求められている。本邦では2018年に包括的がんゲノムプロファイリング機能をもつがん遺伝子パネル検査の運用が開始された。当科の2症例を提示し,本検査の実際と課題について文献的内容を加え考察する。
標準治療の終了が予想される79歳女性の右側下顎歯肉癌患者と73歳男性の左側下顎歯肉悪性黒色腫患者に対してNCCオンコパネルテストをした。前者はTP53(R282W)とCDKN2A(R58*)に体細胞遺伝子変異が検出されたが,後者は検出されなかった。両者とも生殖細胞系列に遺伝子変異は検出されなかった。腫瘍遺伝子変異量は1.6と6.2Mus/Mbであり,ともにマイクロサテライト不安定性は陰性であった。検査結果をもとにエキスパートパネルを開催したが,両者とも推奨できる治療法はなかった。
今後は従来の臓器特異的な治療に加え,臓器横断的な遺伝子変異に基づく治療選択の機会が増加すると予想される。