日本口腔腫瘍学会誌
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総説
下顎再建における思考と哲学
横尾 聡去川 俊二長谷川 泰子中村 英玄山口 高広小川 将牧口 貴哉
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2024 年 36 巻 4 号 p. 73-88

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抄録
手術によって生じた顎口腔領域の機能障害や美容・整容的障害は,術前と同一の状態に回復することはできない。術後の欠損に適合した新たな機能体系を構築し,患者が受容できる機能を再形成することが重要で,その再建をfunctional unit reconstructionと呼ぶ。美容・整容面では,術後に患者が受容できるための新たな顔面外形の形成が重要であり,これをframework reconstructionという。Functional unitの概念から考えると,舌,口底,下顎など,顎口腔領域の単体再建では機能再建は不可能であることに気づく。顎口腔領域全体の機能において,各器官が持つ機能性を考慮することが重要で,機能複合体としてひとつの再建を行う必要がある。そのためには,口腔外科医,形成外科医,頭頸部外科医,顎顔面補綴医などが「摂食とは何か,患者が術後受け入れられる顔貌とは何か」という壮大なテーマについて共通の理解を共有しなければならない。すなわち,治療の目的・目標という共通認識,つまり,咀嚼や顎関節機能を含む顎口腔機能とfunctional unit reconstructionの理解が必要である。加えて,下顎再建は顔面の再建であり,患者が術後に受け入れられる顔面のframeworkに関する術者の思考が必須である。
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© 2024 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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