抄録
ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)は,ホウ素化合物の腫瘍選択的集積性と中性子照射を組み合わせることで,がん細胞内に限局した高線量照射を可能とする治療法である。日本では加速器型BNCT装置の臨床導入およびホウ素製剤ボロファラン(10B)(ステボロニン®)の薬事承認を契機として,照射後再発頭頸部癌に対する新たな救済治療としてBNCTの臨床応用が進んでいる。口腔癌は局所制御が予後に直結する一方,照射後再発症例に対する治療選択肢は限られている。本総説では,再発口腔癌に対するBNCTの現状について概説するとともに,当院での照射後再発口腔扁平上皮癌に対して施行したBNCTの臨床成績を紹介する。2020年6月以降にBNCTを施行し3年以上経過した30例を解析対象とした。客観的奏効率は76.7%で,2年全生存率,局所制御率,無増悪生存率はそれぞれ53.3%,31.6%,20.0%であった。完全奏効が得られた症例では非完全奏効例と比較して有意に良好な生存成績を示した(p<0.01)。一方で,重篤な有害事象として口腔粘膜炎,顎骨壊死,頸動脈破裂が認められた。以上より,BNCTは照射後再発口腔癌に対する有望な治療選択肢となり得るが,厳密な適応選択および支持療法の充実が不可欠であり,他治療法との適切な使い分けが今後の課題と考えられる。