日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
口腔粘膜扁平上皮癌再発症例におけるメタロチオネインの免疫組織化学的検討
伊藤 道一郎宮崎 力上谷 猛馬場 信行空閑 祥浩水野 明夫
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 10 巻 4 号 p. 235-243

詳細
抄録

メタロチオネイン (MT) は低分子量 (6000-7500) の金属結合蛋白で, 最近, 腫瘍などの細胞増殖との関連についての重要な知見が得られている。今回, 口腔粘膜扁平上皮癌再発症例 (n=12) において, MT発現について免疫組織化学的に検討した。ホルマリン固定・パラフィン包埋標本を抗MT抗体を用いたavidin-biotin peroxidase complexmethodにより染色し, 陽性率を算出した。扁平上皮癌非再発症例 (n=21) および再発症例 (n=12) の初発時のMT陽性率はそれぞれ40.8%, 70.1%で, 両者間に統計学的有意差が認められた。また, 再発症例の初発時および再発時のMT陽性率は, それぞれ, 70.1%および76.7%で, 両者間に統計学的有意差は認められなかった。しかしながら, 再発症例 (n=9) を症例別にみてみると, 再発時のMT陽性率が増加傾向を示した6例は, すべてが腫瘍死であったのに対し, MT陽性率が減少傾向を示した3例は, すべてが予後良好であった。したがって, 免疫組織化学的なMT陽性率の検索は, 口腔粘膜扁平上皮癌症例における腫瘍細胞の性質を把握する上で意義があり, 臨床的には治療法の選択, 患者の予後予測の一指標として有用と考えられた。

著者関連情報
© 日本口腔腫瘍学会
次の記事
feedback
Top