日本口腔腫瘍学会誌
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唾液腺腫瘍90例の臨床統計的検討
山中 康嗣桐田 忠昭山本 一彦大儀 和彦今井 裕一郎下岡 尚史杉村 正仁
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1999 年 11 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

1981年10月当科開設より1997年6月までの15年8か月間に奈良県立医科大学口腔外科において病理組織学的に唾液腺腫瘍と診断された90例について臨床統計的検討を行い以下の結果を得た。
1. 性別は男性が46例, 女性が44例とほぼ同数であった。
2. 平均年齢は良性腫瘍では45.1歳, 悪性腫瘍は56.4歳で, 男女間の平均年齢は良性腫瘍ではほぼ同じであったが, 悪性腫瘍では男性は女性より約25歳高齢であった。
3. 組織型では良性腫瘍72例のうち多形性腺腫61例, Warthin腫瘍9例, 筋上皮腫, 嚢胞性リンパ管腫, 各々1例で, 悪性腫瘍18例のうち, 腺様嚢胞癌12例, 粘表皮癌, 基底細胞腺癌, 各々2例, 多形性腺腫内癌, 扁平上皮癌, 各々1例であった。
4. 発生部位では大唾液腺原発が36例 (40.0%) , 小唾液腺原発が54例 (60.0%) で, 大唾液腺では耳下腺が25例 (69.4%) と最も多く, 小唾液腺では口蓋が37例 (68.5%) と最も多くを占めた。
5. 初診時臨床症状は良性腫瘍では全例に無痛性腫脹が認められた。悪性腫瘍では腫脹に疼痛等, 何らかの症状が合併している症例が多く認められた。
6. 治療法は良性腫瘍では全例に手術を施行し, 悪性腫瘍では手術単独療法が4例で, 術前, 術後に放射線, 化学療法を併用したものが11例と多くを占めていた。
7. 良性腫瘍では全例に再発は認められず, 良好な結果を示したが, 悪性腫瘍では5年及び10年累積生存率は55.0%で, Stage別ではI, II群100%, III, IV群41.6%, N分類別ではN (1-3) 群46.7%, N (0) 群75.0%であり, 進行例が予後不良であった。

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