日本口腔腫瘍学会誌
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口腔扁平上皮癌の間質線維化と細胞外基質分解酵素の発現に関する病理組織学的検討
―癌浸潤樣式との関連性について―
田中 彰川尻 秀一能崎 晋一加藤 広禄中谷 弘光野口 夏代長谷 剛志中川 清昌山本 悦秀
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2004 年 16 巻 4 号 p. 169-181

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抄録

癌は間質に浸潤する際に間質反応として線維化を伴うことが知られているが, 癌に対する宿主防御反応であるか, 癌細胞増殖の足場として機能しているのかは不明である。本研究では口腔扁平上皮癌患者から得られた生検材料からAzan染色画像解析による半定量法を用いて癌浸潤先進部における間質内コラーゲン線維含有量 (collagen fiber content by percent; CFC (%) ) の平均値 (Ave.-CFC (%) ) を求め, 上皮基底膜 (IV型コラーゲン) と代表的な細胞外基質 (ECM) 分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ (MMPs) (MMP-1, MMP-2, MMP-9, MT1-MMP) の免疫組織化学的発現を調べ, 癌浸潤様式との関連性について検討した。Ave.-CFC (%) は癌浸潤様式1型から4C型にかけて減少傾向を示したが, 4D型では最も高値を示した。また, 各種MMPsの発現については癌細胞陽性型と, 癌・線維芽細胞陽性型に区分され, 特に4C, 4D型ではMMP-2, MT1.MMPは癌・線維芽細胞陽性型が高頻度に認められた。IV型コラーゲンは浸潤性に伴って有意に欠損していた。以上の結果から, 癌の浸潤性が高度になるに従ってECM分解機序に変化が起こり, 癌細胞主導型から癌・間質相互型に移行し, 既存の間質内コラーゲン線維の分解が進行するものと考えられるが, 4D型癌組織にはコラーゲン線維合成が浸潤促進的に作用する特異的浸潤機構が存在していると推測される。

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