抄録
口腔癌術後における嚥下障害の危険因子を解明することは術式の選択, 患者および患者家族に対するインフォームド・コンセント, 嚥下リハビリテーションの点できわめて重要である。本報告は口腔癌術後に嚥下機能がどの様に変化するのかを観察することである。対象は, 手術治療を行なった舌癌stage I, II症例のうち, 造影X線透視検査にて嚥下機能評価を行った33例中, 術前, 舌部分切除後, 頸部郭清後に評価が可能であった9症例である。造影X線透視検査の結果を定性的, 定量的に評価した結果, 定性的評価では, 頸部郭清後には喉頭蓋谷, 梨状陥凹への試料の残留, 試料の咽頭通過時の左右差が認められた症例が増加していた。定量的評価では, 術前, 舌部分切除後, 頸部郭清後における各パラメーター間で明らかな有意差は認められなかった。頸部郭清は嚥下機能に影響を及ぼす可能性はあるものの, 誤嚥を引き起こす絶対的因子ではないことが示唆された。