日本口腔腫瘍学会誌
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85歳以上口腔扁平上皮癌症例の臨床的検討
姉川 絵美子古賀 真津山 治己岩本 修古賀 千尋楠川 仁悟
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2007 年 19 巻 2 号 p. 125-131

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抄録

1974年から2005年の30年間に当センターで経験した, 口腔扁平上皮癌一次症例663症例のうち, 85歳以上であった37例 (5.6%) について検討した。
性別は男性16例, 女性21例で, 平均年齢は88.2歳であった。臨床病期はStage I: 5例 (13.5%) , Stage II: 14例 (37.8%) , Stage III: 7例 (18.9%) , Stage IV: 11例 (29.7%) であった。発症部位は下顎歯肉: 14例 (37.8%) , 上顎歯肉: 10例 (27.0%) , 舌: 5例 (13.5%) , 頬粘膜: 4例 (10.8%) , 口底: 3例 (8.1%) , 口蓋: 1例 (2.7%) であった。初診時合併症は78.4%の患者にみられ, その半数以上に循環器系疾患がみられた。治療態度は, 21例 (56.8%) が根治的治療, 10例 (27.0%) が姑息的治療, 6例 (16.2%) が無治療であった。1年, 3年, 5年の疾患特異的累積生存率は, 各66.1%, 53.8%, 53.8%, 粗生存率は58.9%, 33.3%, 20.0%であった。また, 85歳以上の根治的治療群の5年累積生存率は84.3%, 全症例群では84.6%となっており, 85歳以上の高齢者であっても若壮年者と同等の予後が得られた。
これらの結果は85歳以上の高齢者においても, 可能な限り根治的治療を行えば長期予後が期待できることを示唆している。

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