抄録
対象症例は口腔癌患者21名である。9症例に対してUFTを連日300mg投与した。これから得られた臓器内の5FU濃度は扁平上皮癌で0.027±0.022μg/ml, 悪性組織球腫で0.034μg/ml, 腫瘍対応健常口腔組織で0.005±0.0008μg/ml, 転移リンパ組織で0.042±0.008μg/mlであった。腫瘍内5FU濃度と健常口腔組織のそれとの比は5.4: 1転移リンパ節と血清のそれは10: 1であった。
12症例にはUFTを連日600mgを投与し, 手術前夜に200mg服用させ, 平均15.4時間後に検体を採取した。臓器ごとの5FU濃度は腫瘍, リンパ節と唾液腺で高く, 血清, 筋と健常口腔組織では低い値となった。腫瘍の組織型ごとの計測値は扁平上皮癌で0.054±0.033μg/ml, 多形1生腺腫内癌で0.046μg/ml, 腺様嚢胞癌で0.027μg/mlであった。腫瘍の分化と5FU濃度との関係では未分化癌でもっとも高く, 低分化扁平上皮癌がそれに続いた。
UFTの抗腫瘍1次効果と腫瘍内5FU濃度の関係を11症例について検討した。連日300mg投与症例の抗腫瘍効果は4例中の1例に有効 (25%) , 一方, 600mg群では7症例中の5例に有効 (71%) であった。有効例中にUFT単独が2例, 併用療法群ではUFTとBLMあるいはPEPとの併用3例であった。BLMとの併用の1例が腫瘍の消失をみている。有効症例のUFT単独あるいは他剤との併用の有効例の腫瘍内濃度はいずれも高かった。