日本口腔腫瘍学会誌
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2 巻, 1 号
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  • 柳澤 繁孝, 小野 敬一郎, 河村 哲夫, 水城 春美, 清水 正嗣
    1990 年 2 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    対象症例は口腔癌患者21名である。9症例に対してUFTを連日300mg投与した。これから得られた臓器内の5FU濃度は扁平上皮癌で0.027±0.022μg/ml, 悪性組織球腫で0.034μg/ml, 腫瘍対応健常口腔組織で0.005±0.0008μg/ml, 転移リンパ組織で0.042±0.008μg/mlであった。腫瘍内5FU濃度と健常口腔組織のそれとの比は5.4: 1転移リンパ節と血清のそれは10: 1であった。
    12症例にはUFTを連日600mgを投与し, 手術前夜に200mg服用させ, 平均15.4時間後に検体を採取した。臓器ごとの5FU濃度は腫瘍, リンパ節と唾液腺で高く, 血清, 筋と健常口腔組織では低い値となった。腫瘍の組織型ごとの計測値は扁平上皮癌で0.054±0.033μg/ml, 多形1生腺腫内癌で0.046μg/ml, 腺様嚢胞癌で0.027μg/mlであった。腫瘍の分化と5FU濃度との関係では未分化癌でもっとも高く, 低分化扁平上皮癌がそれに続いた。
    UFTの抗腫瘍1次効果と腫瘍内5FU濃度の関係を11症例について検討した。連日300mg投与症例の抗腫瘍効果は4例中の1例に有効 (25%) , 一方, 600mg群では7症例中の5例に有効 (71%) であった。有効例中にUFT単独が2例, 併用療法群ではUFTとBLMあるいはPEPとの併用3例であった。BLMとの併用の1例が腫瘍の消失をみている。有効症例のUFT単独あるいは他剤との併用の有効例の腫瘍内濃度はいずれも高かった。
  • 古江 美保, 岡本 哲治, 高田 和彰
    1990 年 2 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ヒト口腔領域由来腫瘍細胞, UEDA, NAKATA, KANETSUKI, HSG, HSY, 子宮頸部由来HeLa, 外陰部由来A431の7種の培養細胞を用いてシスプラチンに対する感受性を検索した。腺癌細胞は扁平上皮癌細胞に比べてシスプラチンに対して高い感受性を示し, 唾液腺腺癌に化学療法が有用であると示唆された。また, 一方扁平上皮癌細胞は自然耐性を示した。シスプラチンに感受性の高い細胞は高い細胞内シスプラチン濃度を示し, シスプラチンの取り込みは殺細胞効果を反映すると考えられた。シスプラチン耐性のメカニズムを解明するためにHeLa細胞を用いてシスプラチン耐性細胞を分離した (HeLaDDP) 。同細胞はシスプラチン非存在下17ケ月間継代培養した後も約4.3倍の安定した耐性を発現していた。耐性細胞と母細胞との間で細胞内グルタチオン濃度に差はなかった。しかし, 耐性細胞はX線照射による生存率が高く, シスプラチンの取り込みは低下し, 放出に差はなかった。以上の結果から, シスプラチン耐性のメカニズムにはDNA修復能や取り込みの障害が関与していると考えられた。また, HeLaDDPはシスプラチン耐性機序を解明するにきわめて有用であると考えられた。
  • 池嶋 一兆, 岡田 泰之, 相馬 重信, 佐熊 研, 高井 宏
    1990 年 2 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    色素性乾皮症は、しばしば皮膚の癌腫を伴う遺伝性疾患として知られており、その発癌機構は、色素乾皮症のDNA修復の欠損状態によると最近報告されている。
    著者らは、24歳男性の色素性乾皮症に随伴した顎顔面扁平上皮癌の一例を経験した。
    初診より死亡までの期間は約8年9カ月であった。
    病理解剖により、がん組織の頭蓋より脳への直接浸潤が認められた。
  • 迫田 隅男, 陶山 隆, 中村 聡, 岩崎 浩行, 錦井 英資, 芝 良祐, 木佐貫 篤
    1990 年 2 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    40才男性の下顎に生じた骨肉腫の1例を報告する。患者は, 下唇の知覚低下を主訴として1988年7月8日に来院した。初診時には, 臨床的にも病理組織学的にも悪性所見に乏しく, 線維性骨異形成症と診断された。しかし, その2カ月後には下唇の知覚麻痺は進行し, 下顎角部の腫脹と同部のX線的骨吸収像の増加が見られたため, 再度組織診を行い, 骨肉腫と診断された。治療は, アドリアマイシンの動注化学療法後に下顎骨連続離断術と同側の上顎部郭清術を行い, 1カ月後にメソトレキセート (iv) とシスプラチン (iv) の大量療法を追加した。しかし, 手術後13カ月目に肺, 胸壁, 肋骨, 胸部大動脈, 横隔膜などに転移を来し, 死亡した。
    本症例の治療が不成功に終った原因として以下の点が挙げられる。
    1) 初回の生検時に転移防止のための十分な処置が取られなかった。
    2) 病理診断者に正確な病歴と臨床所見が伝わっておらず, 最初適切な診断がなされなかった。
    3) 確定診断がなされたのは, 初回生検より2カ月後であった。
    4) 術後の化学療法開始が遅れ, 総投与量も不十分であった。
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