抄録
埼玉県立がんセンター口腔外科にて治療した口腔内多発癌症例の検討を行ったので報告する。口腔内多発癌の診断基準は, (1) UICC分類による部位が異なること, (2) 同名部位では反対側に認めること, (3) 同側性の場合は2つの病巣間に連続性がなく, 臨床的に1.5cm以上離れていること, (4) 病理組織学的に各々が悪性像を呈していること, (5) 第1癌の放射線治療後10年以上経過後に生じた放射線誘発癌, とした。
1975年11月から'91年12月までに埼玉県立がんセンター口腔外科を受診した悪性腫瘍496例中, 口腔内多発癌は15例 (3.0%) であり, 男女比は1: 1.5であった。年齢は25~80歳で, 平均58.2歳であった。同時性症例4例, 異時性症例11例であり, 2次癌, 3次癌発生までの期間は平均3年8か月であり, 多くが早期癌であった。
飲酒, 喫煙因子と発癌との間に明らかな特徴は認められなかった。
これらのことより, 長期の経過観察と注意深い検索が必要であることが示唆された。