日本口腔腫瘍学会誌
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4 巻, 2 号
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  • 原田 利夫, 三上 隆浩, 三原 和彦, 尾原 清司, 吉村 安郎
    1992 年 4 巻 2 号 p. 213-219
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域扁平上皮癌進展例10例に対するOK-432の腫瘍内投与と臨床経過に伴うSCC抗原値の変動ならびに末梢血好中球O-2産生能に及ぼす影響について検索し, 以下の結果を得た。臨床的に有効症例は4例, 無効症例は6例であった。放射線療法, 開洞・腫瘍減量術とともに, OK-432の大量局注を施行した上顎洞癌のStage III症例は, これにより洞内の腫瘍組織が迅速に壊死融解を生じ, retrospectiveにみれば有効であった。この患者は7年5か月生存中である。しかし, 上記症例を除く領域リンパ節あるいは遠隔転移を生じた進展例に対するOK-432の局注は効果的ではなかった。また, 悪液質のすすんだ症例にはOK-432は有効な反応がみられず, これらの症例ではOK-432によって末梢血好中球のO-2産生能は抑制されたままで, 上昇傾向はみられなかった。OK-432の局注の副作用としては, すべての患者に悪感戦慄を伴う熱発 (38~39℃) を生じさせた。また食思不振が10例中8例に, 全身倦怠感が2例に, 頭重感, 見当識の低下がそれぞれ1例に認められた。
  • 笹倉 裕一, 篠塚 和明, 小堀 実, 伊吹 千夏, 小瀬 晃, 鎌田 仁, 新藤 潤一
    1992 年 4 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    進行性口腔癌3症例に対しinterleukin-2 (IL-2) を投与して, 免疫学的活性を観察した。
    症例1: 77歳の男性, 頬粘膜再発性扁平上皮癌。2.59×107JRU (Japan Reference Unit) のIL-2を腫瘍周囲の組織内に24日間注射した。腫瘍の縮小が認められ, PRと診断したが, その後腫瘍は増殖し, 患者は4年後に死亡した。
    症例2: 66歳の女性, 頬粘膜の進行性扁平上皮癌。7.7×106JRUのIL-2を11日間静注した。腫瘍は増殖し, 放射線や化学療法を行ったが2か月後に死亡した。
    症例3: 63歳の男性, 上顎洞扁平上皮癌。上顎切除後, 翼突窩に腫瘍の残存が認められた。1.54×107JRUのIL-2静注が60Co照射と併用された。患者は1988年以来, 腫瘍を認めず生存中である。
    好酸球は症例1で増加し, リンパ球は症例1および3で増加した。数種類のリンパ球phenotypeは症例2で高値を示したが, 処置後は増加しなかった。症例1および3においてはCD57とCD16がIL-2投与後増加した。NKおよびLAK活性もまた投与後増大した。
  • 田辺 均, 松富 貞男, 平山 丈二, 伊田 正道, 福田 てる代, 早津 良和, 中島 嘉助, 篠崎 文彦
    1992 年 4 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌ターミナルステージ患者の臨床動態に関して免疫能, 栄養状態などの検討を行った。対象症例は口腔癌にて死亡した19例で, 男性10例, 女性9例であった。流動食 (経管, 経口含む) を中心にコントロールした症例8例, 経管栄養と中心静脈栄養を併用した者9例, 中心静脈栄養のみ2例であった。
    疼痛管理には解熱鎮痛剤の坐剤を用いたものが最も多く, 麻薬を用いたものはわずかに2例であった。呼吸管理の目的で気管切開を行ったもの5例で, うち1例は呼吸器による管理を行った。これらの症例について末梢血赤血球数, 白血球数, リンパ球数, リンパ球サブセット値, SCC抗原値, 血清タンパク, アルブミンについて検討を行った。
  • 西田 光男, 松浦 秀博, 飯塚 忠彦
    1992 年 4 巻 2 号 p. 236-239
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    耳下腺手術で顔面神経主幹を探求する一方法として, 乳様突起前方切痕 (鼓室乳突裂の最下端点) を解剖学的標識とする手段について報告する。すなわち, 同標識を触知しながら見極め得るように探り深部に向って進む。次に同点におき乳様突起前縁から1cm深部に進むと, この位置で顔面神経主幹を確実に発見することが可能である。本法は, 顔面神経主幹を探求するにあたり簡単かつ安全で, 個体差や腫瘍病変などによる影響を受けず, また正に茎乳突孔そのものの解剖学的位置を示しているため極めて有用である。
  • 六川 健, 横尾 恵美子, 桑澤 隆補, 三宮 慶邦, 扇内 秀樹
    1992 年 4 巻 2 号 p. 240-248
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1985年1月~91年10月までに東京女子医科大学口腔外科にて施行された口腔顎顔面再建18例について検討し, 以下の結果が得られた。
    1.性別では, 男性11例, 女性7例 (男女比1.57: 1) で, 初診時年齢は25~82歳で平均年齢52.8歳であった。
    2.全例即時再建例で, 術前放射線療法あるいは化学療法が併用されたものが14例であった。
    3.原疾患は, 扁平上皮癌14例, 脂肪肉腫1例, 横紋筋肉腫1例, 悪性エナメル上皮腫1例, エナメル上皮腫1例であった。
    4.部位別では, 軟組織のみの再建11例, 下顎骨のみの再建6例, 下顎骨および軟組織の再建4例であった。
    5.軟組織のみの再建は, D-P皮弁4例, 頸部島状皮弁1例, 前腕皮弁2例が完全に生着した。
    6.下顎骨の再建は, 腸骨使用例1例, 血管柄付肩甲骨皮弁1例が, 軟組織を含む再建では, 血管柄付肩甲骨皮弁1例が完全に生着した。
    7.軟組織の再建は, 部位・範囲など考慮すれば, 有茎・遊離皮弁ともに良好な成績が得られるが, 下顎骨および軟組織を含む比較的大きな欠損には, 血管柄付遊離骨皮弁が有用と思われた。
  • 松島 凜太郎, 清水 正嗣, 柳澤 繁孝, 水城 春美, 小野 敬一郎, 松本 有史
    1992 年 4 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    小児の下顎骨に発生したエナメル上皮腫の5症例について報告した。性別は男児2例, 女児3例であった。年齢は10歳から14歳にわたり, 平均12.6歳であった。X線所見では3例が単房性を示し, 2例が多房性の嚢胞様透過像を示した。5例中4例に対し治療を行い, 開窓療法により, 臨床的ならびにX線学的に病変の縮小を認めた。その後, 下顎骨の縮小手術を実施し, 満足し得る成績を得た。病理組織所見では全例が叢状型のエナメル上皮腫であった。
    小児のエナメル上皮腫の治療においては顎骨の拡大切除は行い難い。嚢胞性のエナメル上皮腫に対しては開窓療法が効果的であった。
    加えて臨床的ならびに文献的考察を行い, 小児のエナメル上皮腫について考察した。
  • 塩谷 健一, 岡部 貞夫, 松木 清弘, 遠藤 剛, 松木 繁男, 出雲 俊之, 桐田 忠昭, 天笠 光雄
    1992 年 4 巻 2 号 p. 257-263
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    埼玉県立がんセンター口腔外科にて治療した口腔内多発癌症例の検討を行ったので報告する。口腔内多発癌の診断基準は, (1) UICC分類による部位が異なること, (2) 同名部位では反対側に認めること, (3) 同側性の場合は2つの病巣間に連続性がなく, 臨床的に1.5cm以上離れていること, (4) 病理組織学的に各々が悪性像を呈していること, (5) 第1癌の放射線治療後10年以上経過後に生じた放射線誘発癌, とした。
    1975年11月から'91年12月までに埼玉県立がんセンター口腔外科を受診した悪性腫瘍496例中, 口腔内多発癌は15例 (3.0%) であり, 男女比は1: 1.5であった。年齢は25~80歳で, 平均58.2歳であった。同時性症例4例, 異時性症例11例であり, 2次癌, 3次癌発生までの期間は平均3年8か月であり, 多くが早期癌であった。
    飲酒, 喫煙因子と発癌との間に明らかな特徴は認められなかった。
    これらのことより, 長期の経過観察と注意深い検索が必要であることが示唆された。
  • 滝下 幸夫, 宮本 洋二, 林 英司, 長山 勝, 東 富雄, 林 良夫, 高橋 敬治, 宇山 正
    1992 年 4 巻 2 号 p. 264-269
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    重複癌は悪性腫瘍の増加にともない増加する傾向にあり, 転移性腫瘍との鑑別が困難な症例も多い。われわれは左顎下腺および肺の重複癌の1例を経験した。患者は77歳男性で, 1990年8月22日, 左顎下部の無痛性の腫脹を主訴に当科受診した。初診時, 胸部X線写真にて右肺に腫瘍を思わせる陰影を認めた。顎下部生検で粘表皮癌との病理組織診断を得た。また, 肺の腫瘍様病変の穿刺細胞診では粘表皮癌を示唆する所見がみられ, 左顎下腺癌の肺転移と診断した。同年10月2日, 左全頸部郭清術, 下顎骨区域切除術, 腫瘍切除術, チタンプレートおよびD-P皮弁による即時再建術を行い, D-P皮弁切離術と同時に右肺中葉切除術を施行した。肺腫瘍の病理組織検査の結果, 組織型は腺癌で, 本症例は左顎下腺と右肺の同時性重複癌であることが判明した。術後1年3か月を経過した現在, 再発, 転移等を認めず経過良好である。
  • 宮本 日出, 宮田 勝, 坂下 英明, 車谷 宏
    1992 年 4 巻 2 号 p. 270-278
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    血管筋腫は1937年, Stoutが最初に報告した良性腫瘍である。
    血管筋腫は口腔領域に発生することはまれである。
    下唇に発生した血管筋腫の1例を報告し, 文献的考察を行った。
    30歳の男性が左側下唇の腫瘤を主訴として当科を受診した。同日, 局所麻酔下にて腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的診断は血管筋腫であった。
    本邦における口腔領域においての本腫瘍の報告例は, 本症例を含めて65例であった。
  • 塩谷 健一, 岡部 貞夫, 松木 清弘, 遠藤 剛, 松木 繁男, 出雲 俊之, 天笠 光雄
    1992 年 4 巻 2 号 p. 279-285
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    頸動脈小体腫瘍は稀な疾患である。今回われわれは選択的頸動脈造影にて頸動脈小体腫瘍と診断可能であった1例について報告する。
    症例は, 43歳女性。頸部の無痛性腫瘤を主訴に, 1990年12月13日埼玉県立がんセンター口腔外科受診。選択的頸動脈造影にて, 腫瘍は血流に富み, 頸動脈分岐部に位置し, 栄養血管が外頸動脈の枝であることが明確となり, この所見より頸動脈小体腫瘍 (Shamblin I型) であると診断可能であった。腫瘍は全身麻酔下にて容易に摘出可能であった。病理組織学的には, 傍神経節腫であった。術後経過は良好である。
  • 原田 博史, 楠川 仁悟, 大内田 美保, 田中 俊一, 翁 玉香, 亀山 忠光
    1992 年 4 巻 2 号 p. 286-293
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮線維腫は非常に稀な混合性歯原性腫瘍で, 歯原性上皮と間葉組織の増殖からなり, 歯牙硬組織形成を認めないのが特徴とされている。一般に大半は20歳以下の若年者で, 下顎に多く発生するといわれる。
    今回われわれは1歳半女児に先天性にみられた周辺性と思われるエナメル上皮線維腫を経験したので若干の文獣的考察とともにその概要を報告する。症例は1歳半女児で, 厄相当歯槽部の腫瘤形成を主訴に1991年8月21日当科受診した。E相当歯槽頂部に大豆大, 弾性軟, 表面凹凸不整, 頂部に白色を呈する潰瘍を伴う有茎性腫瘤を認め, 先天性エプーリスを疑い入院の上, 全麻下に9月6日腫瘍切除術さらに腫瘍の完全な切除を期し, 9月13日厄抜歯および拡大切除術を施行した。病理組織学的には, 幼若な線維組織中に索状あるいは塊状の歯原性上皮の増生を認め, エナメル上皮線維腫と診断した。術後1年の現在経過観察中で, 再発は認めず, Eはほぼ完全に萌出している。
  • 田口 斉, 橋本 温, 谷岡 博昭
    1992 年 4 巻 2 号 p. 294-298
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 癌の診断技術と集学的治療の発達により癌患者の平均寿命が延長することによって, 重複癌が増加する傾向にある。われわれは, 胃, S状結腸, 口底, 耳下腺に発症した50歳男性の四重癌患者を経験したので報告する。
    患者は1987年5月に右側口底部の接触痛を主訴に来科し, 口底癌の診断下, 放射線治療, 外科療法, および化学療法を施行し軽快退院した。しかし, 退院4か月後に耳下腺腫瘍の診断を得, 当院耳鼻科にて治療を受けたが腫瘍増大にて死亡した。なお, 当科初診7年前に胃癌, 5年前にS状結腸癌で他院にて治療をうけていた。
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