抄録
頭頸部腫瘍の画像診断において, X線CTと共にMRIは, 必須の検査法となりつつある。特にMRIは軟組織のコントラスト分解能に優れ, 頭蓋底の骨, 含気腔周囲の骨および金属補綴物よりのアーチファクトが少ないことより, 口腔外科領域への応用は非常に有用であると思われる。しかし一方, MRIは疾患特異性は意外に低いとされており, その向上および, 病巣検出能の向上のため著者らは, 頭頸部腫瘍10症例に対してGd-DTPA (gadorinium-diethylenetriamine pentaacetic acid) による造影MRIを施行し, その有用性の検討を行い, 以下の結論を得た。
1.扁平上皮癌症例においては, 軽度の造影効果を認め, 造影後, その信号強度は脂肪よりやや低信号強度となった。
2.今回の症例においては, 造影前T1強調像, T2強調像にて局在を捉えることができなかった腫瘍は, 造影像にてもその局在を捉えることができなかった。
3.上顎洞扁平上皮癌症例において, 造影像にて容易に腫瘍と洞内の粘液貯留との鑑別を行うことができた。
4.動きのアーチファクトの影響を受けやすい舌扁平上皮癌症例においてT2強調像同様のコントラスト良好な, かつT1強調像同様の鮮明な画像を得ることができた。
5.腺様嚢胞癌再発症例において, 腫瘍は脂肪変性組織により囲まれているため, 造影剤投与によりかえって, 周囲組織とのコントラストは低下した。