抄録
遊離前腕皮弁による口腔再建を16例に行った。症例は男性12例女性4例で年齢は43歳から78歳であった。原発巣は舌, 頬粘膜, 口底が各4例, 口峡咽頭3例, 下顎歯肉1例であった。組織型は扁平上皮癌が14例, 粘表皮癌と腺様嚢胞癌が各1例であった。術後の経過は14例が完全生着であったが, 2例は全壊死となった。全壊死はそれぞれ動脈血栓と静脈血栓に因るものであった。動脈血栓は術前治療に5-FUの動注を行った不適当な血管を吻合血管として用いたことや, 動脈吻合後の再クランプ, 血管への圧迫等が考えられた。静脈血栓は創閉鎖時の血管の捻れにて生じた。
前腕皮弁は薄く柔軟性に富み, 大きさとデザインが比較的自由であるため, 粘膜の欠損が比較的広いものの, あまり大きな厚みは必要としない欠損部の再建に適しており, 特に, 可動性が要求される舌, 口底部や, 形態の複雑な頬粘膜から日後部, 口峡咽頭などの再建に有用と思われた。