抄録
UICCのTNM分類 (1987年) をそのまま下顎歯肉癌に適用する場合, 歯肉は比較的薄い組織のために腫瘍組織が骨に到達するのは速やかで, 多くの症例がT4に分類されてしまう恐れがある。
これを是正するため, T4に対する種々の分類基準が提案されている。
当科で治療を行った下顎歯肉扁平上皮癌新鮮症例26例を対象として, (1) UICCのオリジナルT分類基準, (2) 修正T分類基準A (腫瘍組織が歯槽骨を越えて浸潤している場合をT4とする日本頭頸部腫瘍学会提案の基準) , および (3) 修正T分類基準B (腫瘍組織が下顎管に到達している場合をT4とする基準) の3種類の基準で分類し, 各基準の妥当性を検討した。
修正T分類基準Bは, 症例分布のバランスがよく, Kaplan-Meier法による累積生存率ではT2とT3およびT2とT4の間にそれぞれ有意差が見られた (10grank法, P<0.05) 。
以上の結果, 修正T分類基準Bは他の2つの分類基準よりも実際的であると考えられた。