日本口腔腫瘍学会誌
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画像診断学的に頬リンパ節転移と思われる顎口腔癌の2例
木村 幸紀花澤 智美道脇 幸博道 健一岡野 友宏
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1996 年 8 巻 4 号 p. 306-312

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抄録
Facial Lymph Nodesの1つで頬筋上にある頬リンパ節への顎口腔領域の癌の転移は非常に稀れである。頬リンパ節の転移性病変が画像診断された例は文献的には10例しかみられない。本報告では, 顎口腟癌からの転移の2例を紹介する。1例は84歳の女性で頬粘膜扁平上皮癌 (T2N1M0) であった。頬粘膜に粘膜下の硬結を伴うポリープ状腫瘤性病変を認め, CTでは, その病変の深部に位置する典型的な転移性リンパ節の所見を呈した別の腫瘤性病変を認めた。他の1例は51歳の男性で上顎洞扁平上皮癌 (T4N1M0) であった。CTとMRでは, 頬部の皮下組織層へ高度に浸潤した腫瘍とは離れて頬脂肪体内に典型的な転移性リンパ節の所見を呈した別の腫瘤を認めた。頬リンパ節転移は, Facial Lymph Nodesの中では最も転移が多くみられ (57%) , 頸部リンパ節転移を合併することは稀である (12%) 。自験例を含めた文献的考察によると頬リンパ節転移の原発部位は頬粘膜や上顎洞が最も多い。これらの結果から, 頬粘膜癌や上顎洞癌の症例では頬リンパ節の評価に断層画像を含めた注意深い検査を要することが示唆される。
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