日本口腔腫瘍学会誌
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8 巻, 4 号
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  • ―転移様相と治療成績について―
    佐藤 明, 鄭 漢忠, 山下 知巳, 野谷 健一, 福田 博, 足利 雄一, 林 信, 戸塚 靖則
    1996 年 8 巻 4 号 p. 273-281
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1974年から1993年までの間に頸部郭清術を施行した口腔扁平上皮癌症例242例を対象に転移様相と予後との関連を検討した。頸部郭清術施行300側のうち組織学的転移陽性は176側で, その平均転移個数は2.4個, 節外浸潤は62側 (35.2%) にみられ, 進展部位はLevel IIIまでで全体の85%を占めていた。
    原発部が制御されたpN (+) 例の頸部再発率は10.5%であった。また, 原発部・頸部ともに制御されたpN (+) 例の遠隔転移の頻度は23.5%で, 3個以上の頸部リンパ節転移例では41.7%の転移率であった。転移個数および進展部位と5年累積生存率との関連が統計学的にみられ, さらに原発部制御例に限定するとpN 3個以上およびlevel IV, Vへの進展例の5年累積生存率はそれぞれ50.9%, 50.5%であった。
    以上の結果から, pN3個以上ならびにLevel IV, Vに進展している症例に対しては, 治療成績改善のために頸部への照射ならびに化学療法などの術後補助療法が必要と思われた。
  • 陶山 一隆, 川崎 五郎, 徳久 道生, 冨永 尚宏, 山辺 滋, 空閑 祥浩, 水野 明夫, 岡邊 治男
    1996 年 8 巻 4 号 p. 282-286
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    小唾液腺に発生した粘表皮癌6症例について病理組織学的に検討した。症例はすべて1次症例で, 発症部位は硬口蓋が3例, 頬粘膜が2例, 下歯肉が1例であった。1991年W.H.O.分類にもとつく組織学的分類では, well differentiated typeが3例, poorly differentiated typeが3例で, poorly differentiated typeの1例に頸部リンパ節転移がみられた。治療は外科療法単独症例が5例, 外科・放射線・化学療法を併用した症例が1例であった。現在のところ全例において再発や転移は認められず, 治療後の経過は良好である。
  • 大矢 亮一, 池村 邦男, 大成 宣弘, 中田 肇
    1996 年 8 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    カルボプラチンの超選択的動脈内投与と放射線照射並びにUFTを併用する治療法を口腔癌の進展例2症例に行った。動注はSeldinger法により大腿動脈からカテーテルを挿入して外頸動脈造影 (DSA) を行い, 腫瘍の支配動脈よりカルボプラチンをone-shotで投与した。
    症例1は舌癌T3N2bM0 (stage IV) で, カルボプラチン700mg動注 (原発巣に450mg, リンパ節転移巣に250mg) と放射線 (X線) 30Gyを照射し, UFT600mgを連日投与した。原発巣はCR, 頸部転移巣はNCであった。切除材料の病理組織学的検索で原発巣に腫瘍細胞は認められなかったが, 頸部リンパ節にはviableな腫瘍細胞が認められた。
    症例2は頬粘膜癌T4N1M0 (stage IV) で, カルボプラチン600mg動注と放射線 (X線) 60Gy照射, UFT400mgを連日投与した。原発巣, 頸部転移巣ともにCRとなった。手術は行わなかった。
    両症例ともに治療後1年を経過しており, 再発, 転移の微候を認めていない。本治療法の著しい抗腫瘍効果, 比較的軽微な副作用は口腔の進展癌に対して有力な治療法であると考える。しかし, 本治療法を行うにあたってはDSAを行える施設とスタッフを必要とすること, 支配血管の確実な同定ができない場合は有効性が予測できない, 等の問題点がある。
  • 大野 康亮, 松井 義郎, 道 健一, 山縣 健佑, 金 修澤, 清水 俊博
    1996 年 8 巻 4 号 p. 294-301
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では当科の上顎切除症例にインプラント義歯を応用した経験について述べた。本研究にはアパタイトプラズマスプレーチタン人工歯根, あるいはアパタイトフレームスプレーチタン人工歯根を使用した。さらにインプラント義歯による咀嚼機能ならびに構音機能について検討し, その結果, デンタルプレスケール, 発色ガムの測定結果は健常者よりも低い値を示したが, 山本の咬度では, 4~6であり, 咀嚼機能の回復を示す結果であった。インプラント義歯の応用により構音機能の回復が得られた。これらのことより, インプラント義歯は上顎切除症例の咀嚼および構音機能の回復に有用であると考えられた。
  • 山本 学, 瀧上 啓志, 猪田 博文, 各務 慎一, 白石 剛, 吉武 一貞
    1996 年 8 巻 4 号 p. 302-305
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    顎骨に発生する類腱線維腫はまれな腫瘍である。24歳の女性に発生した類腱線維腫の1例を報告した。X線診査において不完全に取り囲まれた不均一なX線透過像が認められた。治療としては5の根尖部の腫瘍を切除した。術後経過は良好で, 現在再発傾向は認められない。
  • 木村 幸紀, 花澤 智美, 道脇 幸博, 道 健一, 岡野 友宏
    1996 年 8 巻 4 号 p. 306-312
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Facial Lymph Nodesの1つで頬筋上にある頬リンパ節への顎口腔領域の癌の転移は非常に稀れである。頬リンパ節の転移性病変が画像診断された例は文献的には10例しかみられない。本報告では, 顎口腟癌からの転移の2例を紹介する。1例は84歳の女性で頬粘膜扁平上皮癌 (T2N1M0) であった。頬粘膜に粘膜下の硬結を伴うポリープ状腫瘤性病変を認め, CTでは, その病変の深部に位置する典型的な転移性リンパ節の所見を呈した別の腫瘤性病変を認めた。他の1例は51歳の男性で上顎洞扁平上皮癌 (T4N1M0) であった。CTとMRでは, 頬部の皮下組織層へ高度に浸潤した腫瘍とは離れて頬脂肪体内に典型的な転移性リンパ節の所見を呈した別の腫瘤を認めた。頬リンパ節転移は, Facial Lymph Nodesの中では最も転移が多くみられ (57%) , 頸部リンパ節転移を合併することは稀である (12%) 。自験例を含めた文献的考察によると頬リンパ節転移の原発部位は頬粘膜や上顎洞が最も多い。これらの結果から, 頬粘膜癌や上顎洞癌の症例では頬リンパ節の評価に断層画像を含めた注意深い検査を要することが示唆される。
  • ―症例報告ならびに文献的考察―
    遠藤 有美, 小松 賢一, 福井 朗, 小林 恒, 中山 勝憲, 中野 靖子, 木村 博人
    1996 年 8 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    他臓器の悪性腫瘍が顎・口腔領域に転移することは比較的まれである。顎骨への転移性腫瘍の原発臓器は, 乳房, 肺, 副腎の順に多く, 口腔領域に初発症状を呈する転移性肝細胞癌はきわめてまれである。今回, 著者らは, 下唇の知覚麻痺を初発症状とする下顎骨への転移性肝細胞癌の一例を経験したので臨床経過ならびに文献的考察を報告する。
    患者は59歳, 男性で, 歯科, 麻酔科, 耳鼻科, 神経内科を経て, 当科を紹介された。X線所見で4に近接する骨に, びまん性の骨吸収像を認めた。下顎骨より採取した生検標本の病理組織学的所見で下顎骨の転移性肝細胞癌の診断を得た。
    肝癌が口腔領域に転移した場合の初発症状として, 腫脹, 出血が多いとされていたが, 1957年から1996年における下顎骨に転移した肝細胞癌の報告では27症例中5症例に, 三叉神経の知覚麻痺を認めた。さらに50歳代の男性に多く, 発生部位としては下顎骨体部と下顎枝に多いことが明らかとなった。
  • 平野 裕一, 小山 貴司, 福田 廣志, 橋本 賢二
    1996 年 8 巻 4 号 p. 319-325
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    腺リンパ腫は, 唾液腺腫瘍の約5%を占める。本腫瘍は, 緩慢な発育を示す無痛性の腫瘤で, 大多数は, 片側性に, 耳下腺浅葉の下極部に発生する。しかし, 約7%に, 両側性発生をみることがある。このことは, 他の唾液腺腫瘍では両側性に発症する例がほとんどみられないことから, 本腫瘍の特徴を表している。今回, 我々は, 17年の間隔を経て両側性に発生した腺リンパ腫の症例を経験したので報告する。
    症例は, 51歳男性, 1979年12月, 左側耳下部の腫脹にて当科紹介来院。左耳下腺下部に, 緩慢な発育をする, 無痛性, 弾性軟, 可動性の腫瘤を触知した。腫瘍摘出術施行し, 病理組織学的に腺リンパ腫と診断された。興味深いことに, 1995年9, 月, 右耳下腺下部に, 左側と同様の腫脹を感じるようになったため, 当科を再診した。CT検査の結果, 病変は局所的で, 他の臓器へ浸潤するような像はなかった。以上より良性腫瘍と判断し, 腫瘍切除術を施行し, 腺リンパ腫と診断された。この症例において, 腫瘍発生部位と時期の違いを除いて, 両側耳下腺腺リンパ腫の臨床的および病理学的所見は同じであった。
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