日本口腔腫瘍学会誌
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組織学的に興味ある所見を呈した上顎歯肉扁平上皮癌の1例
大森 一幸柴田 敏之重住 雅彦安彦 善裕大内 知之賀来 亨有末 眞
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1997 年 9 巻 2 号 p. 65-69

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抄録
組織学的に興味ある所見を呈した上顎歯肉扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。
患者は, 58歳の女性で, 右側上顎歯肉の自発痛を主訴に来院した。口腔内診査で, 右側上顎側切歯, 犬歯相当部歯肉に潰瘍形成を認めた。X線診査では, 病変部の歯槽骨の吸収像がみられた。
病理組織学的所見では, 扁平上皮癌細胞と明細胞が見られ, 腫瘍組織中には多くの炎症細胞の浸潤が認められた。扁平上皮癌細胞は高分化型で, 癌胞巣は, 口腔上皮から移行していた。明細胞は, それら扁平上皮癌胞巣内に移行的に見られ, グリコーゲンを示唆するジァスターゼ消化性のPAS染色陽性顆粒を細胞質内に含んでいた。組織学的所見から扁平上皮癌細胞が, 炎症細胞浸潤の影響を受け, 明細胞へ変化した可能性が強く示唆された。全麻下に腫瘍摘出術を施行し, 2年4カ月経過した現在, 再発もなく経過は良好である。
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