抄録
初診時および経過観察の検査で得られたCT像を用いて上顎歯肉癌および硬口蓋癌症例の22例について頸部リンパ節転移の回顧的検討を行った。頸部リンパ節転移は22例中10例に生じ, 3例は初診時から, 7例は初回治療後にみられた。対側リンパ節への転移は, 8例に生じた。1例は初診時から, 3例は経過観察中に両側にみられ, 他の3例は患側の頸部郭清術後に対側転移した。残りの1例は経過観察中に対側のみへ転移した。これらの対側転移は, 上顎歯肉部から硬口蓋領域のリンパは対側にも向かうため生じると考えられた。外側咽頭後リンパ節転移は, 3例にみられた。2例は頸部リンパ節転移が以前または同時にみられ, 他の1例は頸部郭清後の上顎歯肉癌再発例であった。これら3例はいずれも本転移を生じる以前に頸部の外科的処置を受けていた。外側咽頭後リンパ節転移は, 上顎前歯部から切歯管を経由して, あるいは上顎歯肉硬口蓋面部から軟口蓋を経て外側咽頭後リンパ節へ向かうリンパ流によるか, 上頸部領域に残存した腫瘍もしくは頸部郭清術にて輸出リンパ管内に逆行性リンパ流を生じたことが考えられた。