歯科薬物療法
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脱灰骨基質により誘導された異所性骨を用いたチタン合金の簡便で有用な生体適合性評価法
新井 通次長澤 恒保綱島 吉彦松田 朋広河村 広治茂木 眞希雄戸苅 彰史
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2003 年 22 巻 3 号 p. 117-126

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抄録
チタン (Ti) およびTi合金は歯科材料として広く用いられている.最近, アルミニウムおよびバナジウムを含まないTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金が開発された.本研究では, Ti, Ti-6A1-4V合金 (最も広く使われているTi合金) およびTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の生体適合性を評価するために脱灰骨基質 (DBM) ペレットを用いた.長管骨より作製したDBMらペレットをエーテル麻酔下でマウスの背筋の上に移植した.4週間の移植の後DBMペレットには, 骨芽細胞および破骨細胞表原型のmRNA発現および石灰化が認められ, DBMが異所性に骨を誘導したことを示した.Ti, Ti-6A1-4V合金およびTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金のディスクを載せたDBMペレットを同様に移植した.4週間後, それぞれに蓄積したカルシウムは36.6±8.0μg, 50.4±13.3μgおよび75.6±16.9μgであった.TiとTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金との間には有意差 (p<0.05) が認められた.Ti粒子はマウス骨芽細胞, マウス骨髄細胞およびウサギ分離破骨細胞において毒性を示さなかったので, TiとTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金における石灰化の違いは, DBM誘導異所性骨におけるTiによる石灰化の減少を示すものではなく, Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金による増大を示していると理解するほうが合理的であると思われた.これらの知見は, Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金が骨組織に対する優れた生体適合性材料となることを示唆するとともに, DBMで誘導した異所性骨がTi合金の生体適合性評価への簡便かつ有用な方法となり得ることを示した.
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© 日本歯科薬物療法学会
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