2024 年 15 巻 7 号 p. 994-1001
はじめに:成人脊柱変形手術においてProximal Junctional Kyphosis/Failure(PJK/F)は予防すべき合併症である.上位胸椎から骨盤までの固定が必要となる症例もあるが,Upper Instrumented Vertebra(UIV)ついて一定の見解はない.我々はUIVをT4とした症例に絞り,PJFが発生した症例について術前予測因子の有無を調査した.
方法と対象:2012年9月から2021年9月にT4から骨盤までの固定となった成人脊柱変形60例を調査した.PJF群(5例),control群(55例)に分け,術前のBody Mass Index(BMI),T4椎体のHounsfield Unit(HU)値,PI,PT,LL,PI-LL, T1 slope,TK,uTK(立位全脊椎単純X線側面像のT1頭側終板とT5尾側終板のなす角),f-TK(前屈位のTK),f-uTK(前屈位全脊椎単純X線側面像のuTK),Global tilt,術直後のPT,LL,T1 slope,TK,PI-LL,uTK,Global tilt,Global alignment and proportion(GAP)スコアを検討した.
結果:術前因子として有意差が生じたのはPI,f-uTKであった.PIは,PJF群61.8±4.3°に対し,control群50.4±1.7°であった(p=0.0322).f-uTKは,PJF群34.6±3.6°に対しcontrol群14.4±1.3°であった(p=0.00042).多重ロジスティック解析を行うと,PIはオッズ比1.12(95%信頼区間0.95~1.33,p=0.173),f-uTKはオッズ比1.69(95%信頼区間0.98~2.9,p=0.0588)であった.PJFの発生有無に対してf-uTKの値でROC解析を行ったところ,f-uTK 28°が有効なカットオフ値であった(感度1,特異度0.944).
術後因子で有意差がついたものはT1 slopeのみであり,PJF群47.6±5.9°に対し,control群33.5±1.6°であった(p=0.0284).
結語:f-uTK>28°以上の症例ではUIVはT4では不十分であり,UIVをより頭側にすればPJFを防げる可能性がある.